このブログでは、季節に応じた薬膳食材をご紹介しています。
2025年8月7日(立秋)〜9月23日(秋分)の期間を『残暑の薬膳』としてご案内しています。
父のミニトマト家庭菜園
毎年、6月半ばから9月半ばにかけて、父の畑では食べきれないほどのミニトマトが実ります。ところが今年は梅雨が短く、日照りが続いたせいで半分はチリチリに枯れてしまいました。
この画像は、8月上旬頃に撮った”チリチリトマト”です。

父は品種の違いを楽しむのが好きで、毎年種からミニトマトを育てます。桜が咲く頃に種をまくと、ひと月ほどで本葉が3〜4枚になり、畑に植え替えられるほどの苗に育ちます。
トマトは成長が早く、放っておくと脇芽がどんどん伸びてジャングル化してしまうため、本来なら脇芽を摘み取る作業が欠かせません。ですが今年は連日の猛暑で、その手入れも思うようにできなかったとのこと。
花が咲いて1〜2ヶ月ほどで実がなり収穫できるようになりますが、雨が続くと成長点が茶色くなり、そのままダメになってしまうこともあります。お盆前の九州北部の大雨の影響で、残っていた株もほとんど枯れてしまいました。
いま父の畑で収穫できるのはゴーヤとオクラだけですが、熱中症対策のため「午前中の1時間しか畑に出ない」と決めているので、むしろ今の規模がちょうど良いみたいです。
ミニトマトの雑学
トマトの原産地と栽培環境
トマトの原産地は、南米アンデス山脈の高原地帯(現在のペルーやチリ周辺)とされています。標高2000〜3000mの山岳地帯で、昼夜の寒暖差が大きく、強い日射しを受けながらも比較的冷涼な気候が特徴です。地域によって降水量は異なりますが、もともとトマトは乾燥した環境に自生していました。
トマトが葉を茂らせて「ジャングル化」するのは、強い日射しを和らげ、乾燥から身を守るための適応とも考えられています(諸説あり)。
一般に作物は原産地に近い条件でよく育ちます。トマトの栽培に適した環境条件は以下の通りです。
- 気温:20〜30℃(※30℃以上や10℃以下では生育不良や着果障害が出やすい)
- 湿度:多湿を嫌い、適度な通風・乾燥気味の環境が望ましい
- 照度:強い日光が必要
日本のトマト生産地
日本でのトマト生産量は、1位が熊本県、2位が北海道と、気候条件が大きく異なる地域に分布しています。これは、それぞれが出荷時期や品種選定、栽培法を工夫することで、安定的かつ高品質のトマトを供給しているためです。
熊本県は温暖で日射量が多く、水資源や火山灰土壌にも恵まれています。ハウス栽培を活用することで年間を通じて安定した出荷が可能ですが、夏場は高温になるため収穫のピークは春先から初夏にかけて。価格もその時期が最も手頃になります。
一方、北海道では冷涼な気候と長い日照時間を活かし、夏の短期間で生育を完結させる「夏秋トマト」などを栽培。これにより、需要が高まる夏に合わせた出荷が可能となっています。
トマトのトレンド
トマトが日本に伝わったのは江戸時代初期とされています。当時は観賞用として栽培されていました。明治時代になると欧米から改めて食用として導入されましたが、当時の品種は酸味や青臭さが強く、日本人の口にはなかなか合わなかったようです。
昭和期に入ると、アメリカから導入された臭みの少ない大玉品種「ポンデローザ」をきっかけに、ようやく日本人の食生活にトマトが定着し始めます。
さらに昭和58年(1983年)には「タキイ種苗」さんが開発した「桃太郎」が登場。甘味と酸味のバランスが良く、見た目も鮮やかな赤色で大人気となりました。完熟してから出荷しても流通に耐えられるよう改良されていたため「完熟トマト」のキャッチコピーで広まり、「桃太郎」の登場をきっかけにトマトの品種改良は大きく進歩しました。
また同じ頃、切らずに食べられる手頃なサイズの「ミニトマト」が普及し、お弁当の彩りとしても人気を集めました。近年ではその存在感がさらに高まり、市場の取扱額では大玉トマトを5%上回り、ミニトマトが約55%を占めるまでに成長しています。
ミニトマトとは
トマトの品種は、なんと1万種類以上。日本で品種登録されているものだけでも300種類を超えますが、大きく分類すると、大きさ(重さ)と色の違いによってそれぞれ3タイプに分けることができます。
- 大玉…100g以上
- 中玉(ミディトマト)…30〜60g
- ミニトマト(チェリートマト)…10〜30g
🍅直径1cmほどの超小粒の品種は、さらにマイクロトマトに分類されます。
- 桃色(ピンク)系…甘味が強く、酸味は控えめ。サラダなどの生食向き
- 赤色系…甘味と酸味が強い。主に加工向き
- その他…白、黄色、緑、オレンジ、複色のしま模様など
🍅赤色系トマトは主に加工用でしたが、リコピンが豊富に含まれていることから、最近では利用が見直されています。
ミニトマトを「プチトマト」と呼ぶこともあります。これは昭和50年(1975年)に「タキイ種苗」さんが家庭菜園向けにプランターでも育てやすい小型トマトの種を「プチトマト」として発売したことが始まりです。小型トマト全般を指す言葉として広まりましたが、「プチトマト」は特定の品種名であり、2007年に販売は終了。その後はさまざまな品種の小型トマトが流通するようになり、現在では「ミニトマト」が小型トマト全般を指す一般的な呼称となっています。
ミニトマトのレシピと、お気に入り登録しているミニトマト
毎年、父からたくさんのミニトマトをお裾分けしてもらうため、わが家の食卓では大玉よりミニトマトの方がよく登場します。いつでも食べられるように下処理(洗ってヘタを取り、水気をよく拭き取る)してから冷蔵用保存袋に入れ冷蔵庫に常備しているので、キッチンに行くたびについつまんでしまいます。
そのまま食べるか、スープに放り込むくらいで特別なレシピは少ないのですが、同居人が絶賛するお気に入りの2レシピをご紹介します。
【レシピ①】セミドライトマト
「保存目的のドライトマト」ではなく、「旨みを凝縮させて味を楽しむためのセミドライトマト」です。料理にちょい足しするだけでお店の味になります。
カリカリに焼いた薄切りトーストに、「玉ねぎ」の記事でご紹介した「酢玉ねぎ」と一緒にのせるのがお気に入りの食べ方です。

①下処理したミニトマトを横半分に切り、切り口を下にしてキッチンペーパーの上に並べ、15~30分ほど置いて水分を抜きます。
②天板にオーブンペーパー(私は「クックパー フライパン用ホイル」を使用)を敷き、切り口を上にしてトマトを並べ、1個ずつに軽く塩を振ります。
③120度のオーブンで約2時間、じっくり焼きます。焦げやすいので途中で様子を見てください。
すぐに使わない場合は、冷ましてから保存容器に入れ、かぶるくらいオリーブオイルを注ぐと1カ月ほど冷蔵保存できます。ハーブやにんにくを加えると、さらに風味がアップします。
【レシピ②】トマトソース
こちらはミニトマトを大量に消費したいときのレシピです。
毎年食べきれないほどのミニトマトをお裾分けしてもらうので、余った分は下処理してから冷凍用保存袋に入れ、冷凍庫へ(約1ヶ月保存可能)。7月からため込んでいた冷凍ミニトマトがいっぱいになったので、昨日まとめてトマトソースにしました。
水も塩も油も入れず、ひたすら煮詰めるだけのトマトソース。たまにかき混ぜるだけのズボラレシピですが、時間がかかるので余裕のある週末にしか作りません。

トマトソースのスパゲティ
出来立てのトマトソースでお昼にスパゲティをつくりました。

①フライパンに多めのオリーブオイルを入れ、香りが立つまでみじん切りのニンニクを炒めます。
②お玉に2杯くらいのトマトソースを加え、塩を小さじ1/3。軽く水分を飛ばすイメージで温めます。
③スパゲティを茹で、②に加えます。お好みでとろけるチーズを少し加えるとコクが出ます。
※少し置いた方が味が馴染む気がするので、私は②まで終わらせてからスパゲティを茹でます。
④よく混ぜて器に盛り付け、仕上げに黒胡椒をたっぷり挽きます。
お気に入り登録しているミニトマト
父が楽しんで家庭菜園を続けてくれているうちは、お裾分けに甘えようと思っています。とはいえ、毎年大量にもらっているため、もうミニトマトのない夏なんて考えられません。とくにミニトマトで作る手作りのトマトソースは、「夏みかんと甘夏」の記事でご紹介した手作りの甘夏マーマレードと同じく舌が美味しさを覚えてしまっているので、もう市販のトマトソースでは満足できません…。
ただ、今年のように猛暑や大雨で発育不良になることもあります。そんな「いざというとき」や将来に備えて、楽天市場でお気に入り登録しているのが「まどかファーム」さんです。
「まどかファーム」さんは福岡県大野城市に実店舗を構える農産物販売店で、主に九州産の野菜や果物を取り扱っています。「旬の野菜が新鮮で安い!」と評判のお店で、いつか訪れてみたい場所のひとつです。オンラインでは楽天市場店を運営しており、品質保証も手厚く、商品に傷みや異物混入があった場合には交換または全額返金で対応してくださいます(※到着日に商品画像を送ることが条件です)。
こちらのミニトマトは、その時期にいちばん美味しい九州産を厳選して詰め合わせたもの。市販のミニトマトは1パック平均200gなので、換算するとややお高めではあります(3kg×2箱で10,401円税込・送料込みなので、200gあたり約300円強)。
それでも、今年の不作をきっかけに「ミニトマトのストックが豊富にあって、いつでも気軽につまめる環境」こそが私にとっての安心であり、夏を乗り越えるための大切な元気の源なのだと気づきました。
\だから私は“いざというとき”のためにお気に入り登録しました/
トマトの薬膳効能

トマトには「身体を潤し、とくにのどの渇きを癒す」作用があるとされています。
「夏の薬膳」の記事でご紹介したように、夏は『暑邪(しょじゃ)』の影響を受けやすい季節です。発熱や口渇(口の渇き)、多汗、顔面紅潮、意識朦朧、身体のだるさ、疲労感などが現れやすくなるため、身体にこもった余分な熱を冷ますことが大切になります。
「熱を冷ます=冷たいものを食べる」と思われがちですが、それで冷えるのはほんの一瞬。しかも、いちばん冷やしてはいけない『脾(ひ)』を冷やしてしまい、かえって体調を崩す原因となります(詳しくは「梅雨の薬膳」をご覧ください)。
中医学では、『暑邪』で受けた熱を冷ますには『清熱(せいねつ)』『解暑(げしょ)』の働きをもつ食材を摂るのが良いとされています。冷やして食べる場合は、冷凍ではなく冷蔵庫で冷やした状態(5〜10℃くらい)が適切。常温や温かい状態で食べても効果は発揮されるので、おかゆやスープにして摂り入れるのもおすすめです。
トマトには『解暑』の効能があり、体内の熱を下げる働きがあるとされています。入眠前に熱を冷ますことで寝付きが良くなる効果が期待できるため、身体に熱がこもって寝苦しい夜にぴったり。私は夏の間、お風呂上がりに水分補給を兼ねてミニトマトを2〜3個つまむのが習慣です。
またトマトには「生津止渇(せいしんしかつ)」の作用があり、体に潤いを与えて喉や体の渇きを止める効果があります。父も畑仕事の合間に熱中症対策でミニトマトをつまんでいるそうです。
栄養学の観点からは、ビタミンC、βカロテン、カリウムなどが豊富なことに加え、赤色の成分「リコピン」が強い抗酸化作用を持つことが知られています。リコピンの抗酸化力はβカロテンの2倍、ビタミンEの100倍とも言われ、動脈硬化、老化、生活習慣病の抑制に役立つ成分として注目されています。
ミニトマトは大玉に比べ果肉がしっかりしていて水分量が少なく、栄養素が凝縮されているため全体的に栄養価が高い傾向にあります。手軽に取り入れやすい存在ですので、毎日コツコツとミニトマトを食べて、残暑を乗り越えていきましょう。
おすすめの薬膳書籍
薬膳の効能は、書籍によって記載内容が異なることがよくあります。これは薬膳が、数千年にわたる人々の実践と経験の積み重ねで発展してきた学問だからこそ。そんなとき頼りになるのが『先人に学ぶ 食品群別・効能別 どちらからも引ける 性味表大事典 改訂増補版』。
複数の古典書をもとに、1184種類の食材が掲載されており、薬膳を実践するならぜひ手元に置いておきたい一冊です。
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