このブログでは、季節に合わせた薬膳食材をご紹介しています。
2025年2月3日(立春)〜3月20日(春分)の期間を『早春の薬膳』としています。
葉ネギについて
ネギの種類
ネギは大きく3つの系統に分類されます。
- 加賀群(寒冷地で栽培される)
- 千住群(中間地で栽培される)
- 九条群(温暖地で栽培される)
加賀群と千住群は主に長ネギ(根深ネギ)、九条群は葉ネギに分類され、西日本では特に葉ネギがよく食べられます。
よしながふみさんの漫画『愛がなくても喰ってゆけます』に、作者が万能ネギ(葉ネギ)に執着するエピソードが出てきます。子どもの頃、母親と一緒にスーパーに買い物に行き、万能ネギを買ってほしいとねだったところ、高価なため「ふつうのネギで十分です!」と叱られたというお話です。その母親の手には長ネギが握られており、はじめて読んだときは意味がわかりませんでした。私にとって「ふつうのネギ」は万能ネギを示すからです。
万能ネギ
万能ネギは生でも似ても薬味としても使えるまさに「万能な」特製を持っています。福岡ではJA筑前あさくらの登録商標「博多万能ネギ」が広く流通しいることもあり、一般家庭にも万能ネギ文化が深く浸透しています。よそのご家庭ではどうか分かりませんが、実家では食卓に長ネギ料理が並ぶことはあまりなく、ネギを使った料理=すべて万能ネギ。大人になるまで長ネギにはあまりなじみがありませんでした。
ちなみに、福岡県のうどん屋では「ネギ入れ放題」が一般的です。各テーブルには刻んだ葉ネギがたっぷりと用意されており、自由に加えることができます。他県ではネギの追加に料金がかかることもあると知り、驚いたことがあります。
葉ネギの旬と家庭菜園
葉ネギは品種によっては通年栽培が可能なため、特に旬を意識することはありません。
育てやすいので家庭菜園するのもおすすめです。我が家でもニラの隣でプランター栽培しています。暖かい時期に種をまけば、ニラより早い周期で何度も収穫を楽しめます。
ニラと違う注意点としては、どんどん茎が根元から別れて増殖し、いつの間にか株が密集してしまうことです。生育が悪くなるため、適度に根っこから引き抜いて間引く必要があります。
葉ネギのレシピと保存方法
収穫した葉ネギは新聞紙に包み、野菜室で保存すると長持ちします。ビニール袋や市販のポリ袋のままだと蒸れて傷みやすくなってしまいます。すぐに使わない場合は小口切りにして冷凍しておくと、凍ったまま使えるので便利です。
江國香織さんの著書『つめたいよるに』のなかに『ねぎを刻む』という大好きなお話があります。孤独に押しつぶされそうになった夜に、誰とも会わず、話さず、ひたすらネギ(葉ネギ)を刻むという内容なのですが、同じ状況の時に実践してみると、これが本当に効果的でした。無心になれますし、ネギの香りに癒されます。実際、ネギに含まれる香りの成分には神経を鎮める効果があること言われています。20〜30代の頃、何度『ねぎを刻む』に救われたことか。今は酒を飲んでとっとと寝ていますが。
①葉ネギ2〜3束を小口切りにする。
②レモン汁大さじ1・鶏ガラの素大さじ1・ごま油大さじ3と混ぜ合わせる。
冷蔵庫で5〜6日持ちますが、味が濃いので少量ずつしか使用しません。肉、魚、豆腐、炒め物や蒸し物はもちろん、ごはんやバタートーストにも合いますので、我が家ではレシピの量で作成していますが、半分量で作っても良いかもしれません。
余談:ワケギについて
葉ネギによく似た野菜にワケギがあります。
ネギと玉ねぎの交雑種で、球根で増えるため根元にやや膨らみがあります。広島県が主要産地なのですが、福岡でもよく食べられています。クセや辛みが少なく甘味があるのが特徴で、サラダにして食べるととてもおいしいです。私はよく白菜と組み合わせてサラダにしています。
①白菜は、芯の部分はななめ薄切り、葉の部分はざく切りにする。ワケギも5cmくらいの長さに切る。
②塩昆布で和え、食べるときにごま油をかける。
葉ネギの薬膳効能

『先人に学ぶ 食品群別・効能別 どちらからも引ける 性味表大事典 改訂増補版』元気幸房代表 竹内郁子編著:ブイツーソリューション出版より
葉ネギには風邪予防や、風邪の初期症状に対処する効果があると言われています。
中医学では、病気の原因となる6つの外因的な要素を『六淫の邪気』と呼びます。
これらは本来『六気(風・寒・暑・湿・燥・火)』と呼ばれる正常な気候ですが、適応範囲を超えて人体に悪影響を及ぼすようになると『邪気』となります。
『風邪(ふうじゃ)』はその名の通り、「風」が邪気となったものです。
自然界の風は、気候の変化をもたらす重要な要素です。しかし邪気となって体内に侵入すると、『百病の長』とも言われるように、さまざまな病気の原因になり得ます。
通常、『気』は人体の中では一定の法則を持って流れていますが、『風邪』が侵入すると、自然界の風のように気の流れ(気血の運行)が乱れ、頭痛やめまい、関節痛などの症状を引き起こします。
また『風邪』は他の邪気と結びつきやすいため、『寒』と結びついて『風寒邪』となれば悪寒や鼻水などを発症させますし、『熱』と結びついて『風熱邪』となれば発熱やのどの腫れなどを発症させます。
風邪は侵入するとまず体表(表位)に留まり、頭痛、関節痛、悪寒、発熱、鼻水などの症状を引き起こします。この段階だと、適切に発汗を促すことで邪気を排出できます。
しかし、風邪が長引いたり、適切に対処できないと、体の内部(裏位)に入り込み、より深刻な症状を引き起こします。
葉ネギには『発汗解表』の作用があり、特に『風寒邪』の初期症状である悪寒・鼻水などに対して効果を発揮します。
ネギやニンニクに含まれる成分「硫化アリル」には、身体を温めて血行を促進し、発汗を促す作用があるほか、強い殺菌・抗菌作用で細菌やウイルスの増殖を抑える効果もあります。
葉ネギは長ネギほど硫化アリルの含有量は多くありませんが、βカロテンやビタミンCが豊富なので、粘膜を保護して細菌やウイルスの侵入を防ぎ、免疫力を向上させる効果が期待できます。風邪予防に良いですね。ワケギや、同じネギ属のアサツキなどにも同様の効果があると考えられます。
コメント