早春の薬膳

Eye-catching image with blooming plum blossoms, featuring the text “Early Spring Dietary Therapy: Beginning of Spring to Vernal Equinox” 早春の薬膳

今日は立春。まだまだ寒いけど、暦の上ではもう春ですね。

このブログでは、季節に合わせた薬膳食材をご紹介しています。

その前に、少しだけ薬膳の基礎となる『中医学』についてお話します。

中医学『整体観念』

中医学の考えのひとつに『整体観念』というものがあります。

ぬん
ぬん

『整体』は『全体』という意味です。

「すべてはひとつに繋がっているので、部分的に切り取るのではなく、常に全体的にとらえよう」という考え方のことです。

例えば『整体観念』を人の身体に当てはめると、次のようになります。

人の身体は、つながっている。

だから胃が痛いからといって、胃だけを治療するのではなく、不調がどこから来ているのか?を追求して、身体全体のバランスを整えよう!

そうすれば、胃の機能も回復する。

『整体観念』を自然界に当てはめると、次のようになります。

すべてはつながっているので、
人間も自然の一部。

例えば暑いときは毛穴が開き、寒いときは毛穴が閉じるように、自然の変化に順応している。

早春の薬膳のポイント

人間も自然の一部だとすれば、立春の今頃はちょうど芽吹きの季節です。

草木が芽を出し、蕾が膨らんで開花を待つように、人も身体を目覚めさせ、活動の準備を始めなければなりません。

うに
うに

具体的には何をするの?

冬の間に溜まった邪気(病気を引き起こす要因)を、今のうちにデトックスします。

冬の主気である『寒気』には『凝滞(滞ること)』『収引(閉じ込めること)』という性質があるため、冬は身体が要らないものまで蓄えようとします。

これをそのままにしておくと、寒さが緩み始めたとたんに芽吹いて頭痛・微熱・アレルギー・情緒不安定などといった形であらわれ、春先の体調不良の原因となってしまいます。

早春の薬膳のおすすめ食材

デトックスには苦みを持つ食材がおすすめです。春の野山で手に入る食材には、苦みを持つものが多いですね。ただし効能が強いもの・身体を冷やすものが多いので、食べ過ぎは禁物です。

早春におすすめの苦味食材

ふきのとう、タラの芽、ウド、よもぎ、セロリなど。

苦味ではないけど、たけのこもデトックス作用が強い。

肺に帰経する辛味食事もおすすめです。苦味が『邪気の排泄』だとすると、辛味は『邪気の発散』。ニンニクや唐辛子などのスパイス系と、春菊やパセリのような緑の葉物系がありますが、今の時期におすすめなのは後者の方です。

早春におすすめの辛味食材

春菊、高菜、つぼみ菜(からし菜)、葉ねぎ、大根の間引き菜、パセリ、菜の花、わさびなど。
肺経ではないけれど、ニラもおすすめ。

どれも免疫力を高める効果が強いので、体調不良の予防に。
ビタミンCを多く含むので、春先の日焼け予防にも効果的。

こうして並べると、旬の食材が多いことが分かります。

薬膳では、人間も自然の一部なので、自然に順応することが健康を保つ秘訣だと考えられています。

中医学『食養生』

食べることで健康を維持し、病気を防ぎ、治療することを「食養生」といいます。

薬膳には「食べ物には身体を健康にする効能がある」という『薬食同源』の考え方があります。

特に、旬の食材を食べて自然のエネルギーを体内に蓄え、自然治癒力を高めることは『整体観念』の考え方にも通じています。

日本には、「ご自愛ください」という素敵な挨拶がありますが、この言葉には「自分自身を大切にし、健康に気をつけてほしい」という思いやりが込められています。

体調を崩した人に向けて使われるバージョンで「養生してください」という言葉もありますが、意味合いはほぼ同じです。

つまり『養生』とは「自分自身を大切にし、健康に気をつけること」。
『食養生』とは、「食べるものに気を配り、心身ともに健やかに過ごすこと」です。

季節の食材を上手に取り入れながら、一年を通して健康を維持していきたいですね。

おすすめの薬膳書籍

【長文】

薬膳を実践していると、よくぶつかるのが「書籍によって効能の記載が違う」という問題です。なぜそんなことが起こるのでしょうか?

それは、薬膳が人間の経験の積み重ねによって発展してきた学問だからです。最初にまとめられた『神農本草経』をはじめ、今日に至るまでのおよそ3,000年(説によっては4,000年)もの間、たくさんの人が薬膳を実践し、自分の身体で効果を感じ取り、解釈し、時には新たな薬膳書を書き記してきました。いわば、今私たちが目にする書籍たちは、中国3,000年の実戦データの集大成と言えます。

そのため、ある本では「寒性」とされている食材が、別の本で「温性」と書かれていたり、「平性」とされているものが実は熱を冷ます作用を持っていたりすることもあります。そんなときは、古代から伝わる複数の書籍を参照することで、その違いの根拠が見えてきます。

こちらの書籍『先人に学ぶ 食品群別・効能別 どちらからも引ける 性味表大事典 改訂増補版』は、まさにそんな場面で頼れる一冊。

この本は、古典を含む複数の薬膳所に記載されている効能を一覧化しており、タイトルのとおり「食品群(穀類、野菜類など)」や「食材名」、「効能(解表、通便など)」から検索できる辞典です。収録されている食材は、なんと1,184種類!迷った時にすぐ調べることができ、薬膳を実践するなら手元に置いておきたい一冊です。


先人に学ぶ 食品群別・効能別 どちらからも引ける 性味表大事典 改訂増補版

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