夏みかんと甘夏について
夏みかんと甘夏の歴史
夏みかんの正式名称は「夏橙(なつだいだい)」です。原樹は山口県の青海島にあり、江戸時代、この地に漂着した柑橘の果実の種をまいたのが始まりとされています。その後、苗木や果実が萩市に持ち込まれ、やがて萩市の特産品となりました。
一方、甘夏は夏みかんの枝変わり(突然変異)で発見された柑橘です。大分県の川野さんの農園で発見されたことから、正式名称は「川野夏橙(かわのなつだいだい)」といいます。
夏みかんと甘夏の旬
夏みかんは名前の通り、初夏から夏に向けて(4〜7月頃)出回りますが、甘夏はそれより早く、2月頃から流通し始めます。
夏みかんは酸味が強いため、よくゼリーやジュースに加工されます。果汁を絞って炭酸で割ると、酸っぱくてスカッとしますね。夏にぴったりの酸味です。
一方、甘夏は酸味控えめ。独特のほろ苦さとともにしっかりとした甘味も感じられるため、そのまま食べるのに向いています。気温が上がるにつれて酸味が和らぐため、4〜5月頃がもっともおすすめの食べ頃です。
本日のレシピ:甘夏マーマレード
無農薬の甘夏が手に入ったので、マーマレードを作りました。夏みかんや甘夏は、通常は農薬を使って栽培されていることが多いため、無農薬のものが手に入ったらマーマレードにする絶好のチャンスです。
…ただし、正直に言うと、かなり面倒くさい(笑)!

① 皮をむく
夏みかんや甘夏の外皮は硬くて手ではむけないので、ナイフでお尻に切れ込みを入れると剥きやすくなります。
② 白いワタを削ぐ
皮の内側の白い部分(アルベド)は苦味のもと。甘い仕上がりにしたい場合は丁寧に取り除きますが、私はほろ苦いのが好きなので、程良く残します。
③ 千切り&茹でこぼし
②を千切りにして、2〜3回茹でこぼします。茹でこぼすとは、沸騰した湯で2〜3分煮て、ザルにあげる作業を繰り返すことです。
④ 果肉を取り出す
内袋をむき、種も取り除きます。種はペクチンが豊富なので、お茶パックなどに入れて後で一緒に煮込みます。

⑤ 砂糖と合わせる
③と④を計量し、重量の50%程度の砂糖を準備します。今回は甘夏2個分で約400gだったので、200gのグラニュー糖を準備しました。鍋に入れて軽く混ぜ合わせ、30分ほど放置します。

⑥ 煮詰める
中火にかけ混ぜているうちに、どんどん水分が出てきます。グツグツしてきたら弱火にして、焦げないように様子を見ながら煮詰めていきます。かき混ぜすぎると透明感のない仕上がりになるので注意。どのくらい煮詰めるかは好みによりますが、ジャムは冷えるとかなり固まるので、ゆるめの状態で火を止めるのがポイント。種を取り出して、瓶に移します。
私にしては珍しく6工程もあるレシピになってしまったので、瓶の煮沸や保存方法は省略します。甘夏2個分ならすぐに食べ切れる量なので、保存処理する必要もありません。ちょうど1瓶分できました。

面倒くさいだけあって、出来上がったマーマレードは本当に!めちゃくちゃ美味しい!
舌がこの味を覚えてしまっているから、面倒でもついまた作ってしまうんですよね…。パンにもつけず、マーマレード単体でひと匙、またひと匙とついスプーンが進み、気づけば3日で完食してしまいました。
夏みかんと甘夏の産地(ふるさと納税)
夏みかんと甘夏の生産量1位は鹿児島県、次いで熊本県、愛媛県が上位を占め、この3県で国内生産量の約7割を占めています。
実は福岡県も甘夏の産地として知られており、「樹成り完熟」で有名な能古島(のこのしま)や、人気観光地の糸島でも美味しい甘夏が作られています。
ふるさと納税でも無農薬の糸島産甘夏を取り扱っているので、ぜひマーマレードを作ってみてください。
福岡県糸島市:無農薬甘夏
「無理無理!面倒くさい!」という方には、熊本県産の甘夏で、すでにマーマレードに加工済みの商品もあります。福岡県みやま市のふるさと納税返礼品です。
福岡県みやま市:甘夏マーマレード
同じく熊本県産の甘夏を使用した缶詰もあります。みやま市も八女市も、甘夏の名産地・熊本県に隣接しています。身割れした甘夏をハチミツシロップに漬け込んだ缶詰なのですが、これが本当におすすめ!カルディのグレープフルーツ缶が好きな方でしたら、全員ハマると思います。甘味と酸味、ほのかな苦味が最高です!
9月21までにレビューを投稿すればハチミツをもらえるキャンペーンもあるので、お見逃しなく。福岡県八女市のふるさと納税返礼品です。
福岡県八女市:甘夏缶詰
夏みかんと甘夏の薬膳効能

夏みかんと甘夏は、気のめぐりを良くして胃腸を健やかにする効能があると考えられています。
「初夏の薬膳」でもご紹介しましたが、中医学では『肝』の『疏泄機能』が低下すると、気のめぐりが悪くなると考えられています。”めぐらない=流れない”という状態になると、以下のような症状が現れることがあります。
- イライラ、情緒不安定(気持ちが流れない)
- 消化不良、胸焼け、胃もたれ(食べ物が流れない)
夏みかんや甘夏のような柑橘類は、気のめぐりを促して『疏泄機能』をサポートし、これらの症状を回復する働きがあると言われています。
実際に私も、仕事のストレスで食欲がわかず体力が低下していたとき、前述の甘夏の缶詰にずいぶん助けられました。気のめぐりを良くする食材は食欲を引き出してくれますし、柑橘の香りは気分もリフレッシュさせてくれます。二日酔いの時でも、この缶詰だけは食べることができます(笑)。
栄養学的には、クエン酸やビタミンCを含み、疲労回復や風邪予防、美肌効果が期待できます。ビタミンCにはメラニン生成抑制があるので、これからの季節は日焼け予防にも良いですね。
独特のほろ苦さは、フラボノイドの一種である「ナリンギン」によるもの。これはグレープフルーツにも含まれる苦味成分で、食欲抑制・抗酸化作用・脂質代謝の改善・アレルギー症状緩和などの作用があるとされています。
また外皮には「シトラール」や「リモネン」といった柑橘類に共通する揮発性成分が含まれており、爽やかな香りのもととなっています。グレープフルーツや夏みかんなど一部の柑橘類に含まれる香気成分「ノートカトン」も含まれており、こちらは脂肪燃焼を助ける効果が期待されています。
ナリンギンの脂質代謝作用や、ノートカトンの脂肪燃焼効果により、夏みかんや甘夏はダイエットにも良いと言われています。
おすすめの薬膳テキスト
薬膳の効能は、書籍によって記載内容が異なることがよくあります。これは薬膳が、数千年にわたる人々の実践と経験の積み重ねで発展してきた学問だからこそ。そんなとき頼りになるのが『先人に学ぶ 食品群別・効能別 どちらからも引ける 性味表大事典 改訂増補版』。
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