このブログでは、季節に応じた薬膳食材をご紹介しています。
2025年6月11日(入梅)〜7月15日(山笠の追い山)の期間を『梅雨の薬膳』としてご案内しています。
ハトムギの歴史
ハトムギは東南アジアを原産とするイネ科ジュズダマ属の植物です。
中国には紀元前後にベトナムから伝わったとされ、中国最古の薬物学書『神農本草経』にも「薏苡仁(よくいにん)」として記載されています。
日本には江戸時代中期に中国から伝来し、本格的な栽培が始まりました。江戸時代の医師:貝原益軒の「大和本草」には、ハトムギを煎じて飲むと肌荒れや吹き出物に効果があると記されており、この当時から医薬品として使われていたことがわかります。
江戸時代までは「唐麦」「朝鮮麦」などの名で流通していましたが、ハトが好んで食べることから、明治以降に「ハトムギ」と呼ばれるようになりました(諸説あり)。
1884年には当時の内務省衛生局(後の厚生省)がハトムギを保健食として推奨し、近年では様々な健康効果に注目が集まっています。
ハトムギの種類とおすすめハトムギ
中国では、生薬としては「薏苡仁(よくいにん)」、食品としては「薏米(いべい)」と表記されます。
どちらもハトムギの実から外殻を取り除き、精白したものが使用されます。これを煎じて飲むのが伝統的な用法で、薬膳ではスープにして汁ごといただくのが一般的です。粉末にして料理やお菓子作りに使われることもありますが、いずれも加熱調理が基本です。
精白していない状態のハトムギ(玄粒)も流通しており、ぬか層にはミネラルなどの栄養が豊富ですが、「利水」や「いぼ・肌あれ」などに関わる薬効成分の抽出を妨げることがあるため、生薬や薬膳では精白したものが選ばれます。
また、焙煎した精白ハトムギも市販されており、こちらはそのまま食べることもできますが、利水滲湿薬としての薬効は少し落ちます。
一方、ハトムギ茶は殻付きのまま焙煎して作られるのが一般的です。
殻付きのほうが香ばしさが強く、保存性にも優れますが、硬いためお茶以外の用途には適していません。
【豆・雑穀の専門店すずや】国産ハトムギ
こちらは40種類以上の豆と20種類以上の雑穀を取りそろえる、日本有数の穀物専門店です。スーパーではなかなか手に入らない珍しい豆や雑穀も豊富に取り扱っています。
宮城県・仙台朝市店にある実店舗では、用途や希望に合わせて、スタッフの方が最適な商品を提案してくださるそう。いつか訪れてみたいお店のひとつです。
私はいつも1kgサイズを選んでいます。茹でてスープやサラダにしたり、ごはんと一緒に炊いたりすると、あっという間に消費してしまいますが、少量から試してみたい方には150gのお試しサイズもあります。
お店のブログでは、豆と雑穀に関する知識やレシピがたくさん紹介されています。▶https://www.suzuya-rice.co.jp/blog/
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【健康茶専門店がばい農園】発芽はと麦茶
こちらは、自然栽培や国産原料にこだわった健康茶専門店です。すべて手作業で製造されており、残留農薬や放射能検査も実施済み。品質管理が徹底されているため、どのお茶も安心して飲むことができます。
発芽タイプのハトムギ茶は、一般的なハトムギ茶と比べて栄養価が高く、アミノ酸やミネラルなどの有用成分が豊富に含まれています。発芽させることでハトムギ本来の成分をより効率的に引き出せるとされ、体への吸収効率も高まるといわれています。
薬膳の観点からみても薬効が高く、イボ取りや美肌、デトックス、などの効果が期待できます。
Amazonのリンクは「有機栽培 発芽はと麦茶」ですが、「国産の発芽はと麦茶」もあります!
がばい農園 有機栽培 国産 発芽はと麦茶 5g×40包 オーガニック お茶 ノンカフェイン 健康茶 ティーバッグ 無添加 宮崎県産 JAS
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【草漢堂】そのまま食べるハトムギ
こちらは、愛知県を中心に展開する漢方薬局グループです。公式オンラインショップのほか、楽天やYahoo!ショッピングでも購入でき、店頭だけでなく、LINE・電話・Zoomなどによるオンライン相談も受け付けています。
「朝鮮人参」や「陳皮」の記事でもご紹介しましたが、私が生薬を購入するのはほとんどこちらのお店です。
今回は生薬ではなく「焙煎した精白ハトムギ」のご紹介です。そのまま食べることができ、ポリポリと食感が良いため、パソコン作業中のおやつにぴったり。
お得な500g入りもありますが、私は湿気を避けるため、50g入りの小袋を購入しています。
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ハトムギのレシピ
ハトムギの茹で方
ハトムギは、効果が穏やかなので毎日少しずつ食べるのが良いとされています。ただし身体を冷やす作用があるため、冷え性の方は注意が必要。私は冷え性ではありませんが、ハトムギを食べるのは主に6月〜10月頃。生姜や山椒を加えて、スープ仕立てでいただくことが多いです。

① ハトムギを軽く洗い、2時間以上(一晩でもOK。その場合は冷蔵庫で)水に浸けます。
② 浸け汁ごと鍋に移し、水適量を加えて30分ほど茹でます。
③ 保存用の分をすくい出し、残りは煮汁ごとスープに使用します。
冷蔵保存:密閉容器で3〜5日程度
冷凍保存:ラップに包んで1ヶ月程度
ハトムギ茶の飲み方
ハトムギ茶も身体を冷やす作用があるため、飲む際は陳皮を加えます(乾燥生姜でも良いのですが、私は陳皮のほうが好みです)。
また、自律神経が乱れがちな雨の日には、カフェオレの代わりに「麦茶オレ」を楽しみます。

① カップに熱湯を注ぎ、ハトムギ茶のティーバックを入れて3時間ほど浸します。
② かなり濃く・苦みも出たところで、豆乳を加えて電子レンジで温めます。
③ お好みでシナモンパウダーをひとふり。まるでカフェオレのような味わいに。
ハトムギの薬膳効能

ハトムギには「身体の余分な水分『湿』を排出し、肌をきれいに整える」作用があるとされています。
ハトムギの実から皮(殻)を取り除いて精白したものは『薏苡仁(よくいにん)』と呼ばれ、生薬では『利水滲湿薬(りすいしんしつやく)』に分類されます。
「梅雨の薬膳」の記事でも詳しく解説したように、中医学では、消化吸収を担う『脾(ひ)』の働きが弱まると、水分代謝(=『運化』)の機能が低下し、体内に余分な水分(=『湿』)が停滞する『水湿内停(すいしつないてい)』という状態が起こると考えられています。
『脾』が弱る主な原因は「冷え」と「湿」。梅雨時期に冷たいものを多く摂ったり、エアコンのきいた部屋でお腹を冷したりすると、『脾』の働きを損ないやすくなります。
病気の原因となる6つの外因的な要素『六淫の邪気(風・寒・暑・湿・燥・火)』のうち、『寒邪』には『直中(中=お腹)』といって、『脾』を直撃する性質があるからです。
『薏苡仁』はこうした『脾』の機能低下によって生じた『内湿(水湿内停の略)』に適した生薬です。ただし『微寒性』のため、温かい状態で摂るのが無難。冷たい麦茶をゴクゴク飲むのは、真夏以外は控えたほうが良いでしょう(真夏でも、代謝の落ちがちなアラフォー以上の方には、常温かホットがおすすめです)。
また、『薏苡仁』はイボ取りにも効果があるとされています。
現代医学では、イボの主な原因はほとんどがウイルスによるものとされ、それ以外の原因については未解明な点も多くあります。
中医学では、皮膚下に『湿』が溜まることで水イボができ、それが『痰湿』へと進行することで白イボになります。また、『瘀血』が関与すると赤イボができるなど、体内のバランスの乱れがイボの原因と考えられています。
このため、『薏苡仁』は主に『湿』や『痰湿』が原因とされる水イボや白イボに対して効果を発揮するとされています。赤イボやニキビなど『瘀血』が関わるものには、血のめぐりを改善する食材(青魚・お酢・玉ねぎなど)が有効だと考えられています。
栄養学の観点から見ると、ハトムギに含まれる特有の脂質成分「コイクセラノイド」にイボ取りや肌のターンオーバーを促進する作用があるとされています。
その他にも良質なタンパク質やビタミンB群など、新陳代謝を活発にする働きを持つ栄養素が豊富に含まれており、細胞の生まれ変わりを促し内側からの美肌作りに役立ちます。
ただし、『薏苡仁』を高用量で摂取した場合、動物実験において子宮収縮や胚への影響が一部認められています。また授乳中の安全性についても、現時点では十分なデータがそろっていないため、過剰摂取は避けるべきです。
妊娠や授乳中の方は自己判断での使用を控え、必ず医師や薬剤師に相談することをおすすめします。
おすすめの薬膳書籍
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