このブログでは、季節に応じた薬膳食材をご紹介しています。
2025年5月5日(立夏)〜6月11日(入梅)の期間を『初夏の薬膳』としてご案内しています。
玉ねぎについて
新玉ねぎと普通の玉ねぎ
毎年、春から初夏にかけて、父の家庭菜園で収穫された新玉ねぎをおすそ分けしてもらいます。
新玉ねぎは、一般的な「黄玉ねぎ」を通常よりも早い段階で収穫し、乾燥させずにすぐ出荷したものです。収穫後、表皮や茎(青い部分)を残したまま吊るしてしっかり乾燥させることで、長期保存ができる通常の玉ねぎ(以下、「普通の玉ねぎ」)になります。
市販されている新玉ねぎの多くは、出荷前に表皮がむかれ、青い部分もカットされているため、仮に乾燥させても保存性の高い普通の玉ねぎにはなりません。
玉ねぎの保存方法
新玉ねぎは皮が薄く水分が多いため、やわらかくてみずみずしい反面、傷みやすく保存が難しい野菜です。常温では約1週間ほどで皮がぬめり、傷みはじめてしまうため、冷蔵または冷凍保存がおすすめです。
1個ずつ新聞紙やキッチンペーパーで包み、軽く口を閉じたポリ袋に入れて冷蔵庫の冷蔵室で保存すると、1週間〜10日ほど日持ちします。
※湿気を嫌うため、湿度が高め(90%前後)に設定されている野菜室は不向きです。
2~3日以内に使い切る予定なら、皮をむき、上下をしっかり切り落として(特に根を残すと成長が進んでしまいます)、ラップでぴっちり包んで冷蔵保存します。切ったあとは風味が落ちやすいため、加熱調理向けになります。
長期保存には、スライスして冷凍しておく方が新鮮さを保てます。食感が変わるため生食には向きませんが、スープや炒め物などには凍ったまま加熱して使えます。冷凍での保存期間は約1か月が目安です。
一方、普通の玉ねぎは、風通しの良い冷暗所に吊るしておけば常温で2ヶ月ほど保存可能です。ただ、最近ではベランダに吊るす光景も少なくなりましたね。かごや段ボールに入れてキッチンに置いたままだと、害虫(特にゴ◯…)を呼び寄せる可能性があるため、冷蔵や冷凍での保存がより安全で無難です。この場合も、新玉ねぎと同様の方法で保存できます。
新玉ねぎの選び方
新玉ねぎは、扁平(平たく横に広がった形)のもののほうが、より新鮮で若いとされています。丸くふくらんだものは水分が抜けていたり、熟成が進んでいる可能性があります。
また、先端(芽の出る部分)から傷み始めることが多いため、先端が柔らかいものは傷んでいるサイン。手に取ったときに、全体にハリと硬さがあるものを選ぶと新鮮です。
血液サラサラ効果を最大に引き出す玉ねぎの食べ方
新鮮な新玉ねぎは、サラダなどで生のまま食べるのがいちばんおいしいですね。
玉ねぎの辛味成分は「アリシン」と呼ばれる硫化アリルの一種で、血液をサラサラに保つなど、さまざまな健康効果が期待できます。
この効果を最大限に引き出すには、以下の調理方法がおすすめです。

① 外皮をむいて、さっと水洗いする
外皮には「ケルセチン」と呼ばれるポリフェノールが豊富に含まれており、煮出してだしを取るレシピも多くあります。
ただし、外皮には農薬や殺菌剤が残っていることがあるため、だしなどに利用する際は無農薬のものが安心です。
② 繊維に対して垂直にスライス、またはみじん切り・すりおろしにする
玉ねぎは細かく刻むことで細胞が壊れ、酵素の働きによって「アリイン(硫化アリルの一種)」が「アリシン」に変化します。繊維を断ち切るようにカットすることで、より多くのアリシンを引き出すことができます。
③ 切ったあと、10〜20分空気にさらして放置する
切ったあとは水にさらさず、10〜20分ほど放置して空気に触れさせることで、アリシンが活性化し、辛味も揮発して和らぎます。また、水にさらさないことで、アリシンだけでなく、ビタミンCやカリウムなどの水溶性の栄養素も逃さずに摂取できます。どうしても辛味が気になる場合は、水にさらす時間を2〜3分以内にとどめるのが理想的です。
④ お酢やレモン汁と合わせる
お酢やレモン汁と合わせることで、アリシンの効果が持続しやすくなり、さらにこれらの調味料自体にも血圧や血流の改善効果が期待できます。
酢玉ねぎ
実は、ここまで紹介してきた方法を応用したのが、まさに「酢たまねぎ」のレシピなんです。酢たまねぎには、血液サラサラ効果はもちろんのこと、ダイエット効果や腸内環境の改善など、さまざまな健康効果が期待されています。
私の酢たまねぎレシピ
材料
・ 玉ねぎ:1個(約200g)…みじん切り
・ 米酢:大さじ4(60ml)
・ きび砂糖:大さじ1〜1.5(はちみつだと大さじ1)
① 材料をすべて混ぜ合わせて保存容器に入れ、冷蔵庫で半日以上漬け込めば完成。
② 冷蔵保存で10日〜2週間以内を目安に食べ切ります。
※辛味が苦手な方や胃腸が弱い方は、材料を混ぜ合わせたあと軽く加熱(鍋で2分程度)してください。

本日のレシピ:玉ねぎドレッシング
「酢たまねぎ」は作っておくととても便利なのですが、繁忙期など食事のリズムが乱れがちな時期には、なかなか消費しきれないこともあります。
「酢たまねぎ」は要するに、“生の玉ねぎと酢を食べやすくしたもの”。以下の要領でドレッシングにしても、同じ効果が得られます。
分量は、過去に「いちご」でご紹介したフレンチドレッシングのレシピが参考になります。玉ねぎの辛味に合わせて、砂糖をやや増量。材料をすべて一緒にミキサーにかけるだけで完成!食べたい時にパッと作ることができます。
ポイントは、玉ねぎを漬け込む時間がない分、すり下ろして細胞を壊し、成分を引き出すこと。玉ねぎだけだと刺激が強くなるため、人参やパプリカを加えてまろやかにします。

材料
・ 玉ねぎ:1/2個(約100g)
・ パプリカ:1/2個(約100g)
・ ニンニク:お好みで
・ オリーブオイル:大さじ3
・ 米酢:大さじ3
・ きび砂糖:小さじ2(はちみつだと小さじ1〜1.5)
・ 塩:小さじ1/2
・ 胡椒
※サラダ用にはニンニクなしで。肉・魚・パスタに使うときは、ニンニク1〜2かけを加えると風味が引き立ちます。
※保存容器に入れて冷蔵で3〜4日以内を目安に使い切ってください。
おすすめのミキサー
「フードプロセッサーを使うほどでもないな…」というときに、私が愛用しているのが、Angashion(アンガシオン)のコンパクトミキサーです。
もともとは毎朝のプロテイン作り用に購入したのですが、思った以上に使い勝手がよく、ドレッシングやかつお粉など頻繁に調理に使用しています。
一番の特徴は、コードレス・USB充電式という点。
キッチンのコンセントまわりがごちゃつくこともなく、どこでもサッと使えるのが本当に快適です。「フル充電で約23回使用可能」とのことですが、私は月に1回充電する程度で済んでいます。
公式には「野菜や果物はもちろん、氷や冷凍フルーツ、コーヒー豆までしっかり粉砕できます」とありますが、私自身は氷やコーヒー豆に使用したことがありません。バナナジュース程度であれば十分なめらかに仕上がります。
仕事で業務用ミキサーを扱う立場からいうと、氷や葉野菜を使ったスムージーを毎日作るなら、もう少しパワーのあるタイプの方が安心かもしれません。
このミキサーの良さは、何と言っても「手軽さ」。ワンタッチで操作でき、パーツも分解して洗いやすい設計です。350mlと500mlのボトルが付属しており、作ったボトルのまま飲めるのもうれしいポイント。蓋付きなので、持ち運びや保存にも便利です。
Amazonで購入できるリンクを貼っておきますので、ぜひ一度お試しください!
楽天やYahoo!ショッピングでも購入できます
玉ねぎの薬膳効能

玉ねぎには「『気・血・津液』のめぐりを良くして、身体にたまった余分な水分を排出する」作用があるとされています。
「三つ葉」の記事でも触れたように、『血』や『津液』は自力で流れることができません。それらを全身にめぐらせているのが、『気』の持つ『推動作用(動かす力)』です。
そのため、『気』の『疏泄機能(めぐらせる働き)』が低下すると、以下のような症状を引き起こすと考えられています。
- 『血』の流れが滞り、『瘀血』
- 『津液』の流れが滞り、『内湿(身体に余分な水分が溜まること)』
『湿』は長く停滞すると粘り気をもつ『痰湿(たんしつ)』へと変化し、むくみや重だるさなどの症状を引き起こす要因になります。
さらに、『痰湿』の症状が局所的になると『痰飲(たんいん)』と呼ばれ、例として以下のような症状を引き起こすと考えられています。
- 『痰飲』が胃にあると、吐き気や嘔吐、食欲不振、胃もたれなど
- 『痰飲』が肺にあると、胸苦しさや胸悶(胸のつかえ感)、咳や粘り気のある痰が出るなど
玉ねぎは『気』のめぐりを良くして『血』や『津液』の滞りを解消し、さらに痰を溶かして排出しやすくする働き(『化痰』作用)があるとされ、特に上記のような胃や肺の症状に効果的です。
栄養学の観点から見ると、「気のめぐり」「血のめぐり」に対応する作用として、本文中で解説したように硫化アリルの一種「アリシン」に血液をサラサラに保つ効果があることが知られています。
ただし、アリシンは刺激が強いため、大量に摂取すると消化器官を刺激したり、腸内の善玉菌に影響を与える可能性もあります。少量でも十分に効果が期待できますので、コツコツと継続して食べるのがおすすめです。
ちなみに、玉ねぎを長時間炒めると、アリシンは「プロピルメルカプタン」という甘味成分(砂糖の約50倍の甘さ!)に変化します(いわゆる”あめ色玉ねぎ”です)。カレーに入れるとぐっとコクが増しますが、血液サラサラ効果は失われます。
おすすめの薬膳書籍
薬膳の効能は、書籍によって記載内容が異なることがよくあります。これは薬膳が、数千年にわたる人々の実践と経験の積み重ねで発展してきた学問だからこそ。そんなとき頼りになるのが『先人に学ぶ 食品群別・効能別 どちらからも引ける 性味表大事典 改訂増補版』。
複数の古典書をもとに、1184種類の食材が掲載されており、薬膳を実践するならぜひ手元に置いておきたい一冊です。
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