このブログでは、季節に応じた薬膳食材をご紹介しています。
2025年12月22日(冬至)〜2月4日(立春)の期間を『冬の薬膳』としてご案内しています。
福岡の鍋の魚といえば、フグ
先日、グルメ番組に影響された同居人が「フグちり食べたい」と言い出しました。

このブログで何度かお伝えしている通り、私はかなり偏食で、鍋に魚を入れるのもあまり得意ではありません。けれど、フグは別です。フグはとても美味しい出汁が出るので、フグちりは身を食べるというより、締めの雑炊こそが醍醐味だと思っています。
私も久しぶりに食べたくなり、スーパーの鮮魚売り場をのぞいてみたのですが…鍋用の魚コーナーには、タラ、タラ、タラ。隣にアンコウ。……あれ? フグは?
家庭で食べるフグといえば、シロサバフグ(カナトフグ)
私は50年近く福岡に暮らしており、二十歳過ぎまで実家住まいでした。実家の鍋の定番は「肉なら水炊き、魚ならフグちり」。福岡に限らず、佐賀や長崎などの「玄界灘文化圏」では、冬の鍋の魚=フグという感覚の方も多いのではと思います。
全国的にはどうやらタラのほうがメジャーらしい、と知ったのは割と最近のこと。今では普通に食べていますが、子どもの頃はタラを食べたことがありませんでした。
家庭で食べるフグは、もちろんトラフグのような高級品ではありません。主にシロサバフグ(福岡ではカナトフグと呼びます)で、1パック300〜400円くらいで購入していた記憶があります。
当時は「シロサバフグは無毒」とされており、父はよく自分でも釣って捌いていました。しかしその後研究が進み、海域や個体によっては弱い毒性を持つ可能性があると判明。現在ではシロサバフグも「ふぐ条例」の対象となっています。

ふぐ条例とは
ふぐ条例とは、各都道府県が地方自治法に基づいて制定した条例で、食品衛生法を根拠に、フグの処理・調理・販売を規制するものです。他人に販売・提供する場合には、フグ処理師の免許取得が必要とされ、有資格者のみが有毒部位(肝臓・卵巣など)の除去を担います。
シロサバフグの現状
かつて福岡県は、フグの漁獲量が日本一でした。
しかし近年は漁獲量がガクンと減り、現在では北海道が日本一となっています。

その要因のひとつとして挙げられるのが地球温暖化です。
日本近海の海水温が上昇し、フグが好む「やや暖かい」水温帯が少しずつ北へ移動しています。北海道ではホッケやホタテなど冷たい海水温を好む魚介類が減る一方で、フグが増えたという声も。これは単にフグだけの話にとどまらず、「暖海性の魚が北へ移動し、寒冷性の魚が減少する」という、海の生態系全体の組み替えが進んでいることを示しているように思います。
一方、トラフグは福岡でも比較的安定した供給が続いています。
シロサバフグは主に天然ものであるのに対し、トラフグは養殖中心で管理されているため、海水温の影響を受けにくいのが理由のひとつです。ただしその多くは家庭用ではなく、旅館や料亭といった業務用として出荷されています。
さらにフグは「ふぐ条例」に基づいて販売されるため、処理や検査、廃棄物処理にかかる人件費や設備費が必要になります。高級なトラフグであれば採算が合いますが、安価なシロサバフグではコストが見合わず、スーパーでの取り扱いが難しくなっているのが現状です。近海で水揚げされるならまだしも、北海道などからの輸送コストを考えると、そのハードルはさらに高くなります。
こうして考えると、かつて身近だった「家庭のフグちり」がスーパーの売り場から姿を消したのも不思議ではありません。
フグを食べるなら、唐戸市場!
フグ欲にすっかり火がついてしまい、北九州旅行のついでに下関まで足を伸ばしてきました。山口県下関市にある唐戸市場(からといちば:下関市地方卸売市場唐戸市場)は、卸売市場でありながら一般客向けの小売機能も併せ持つ大きな魚市場です。
早朝にはプロ向けのセリや卸売が行われ、その後一般客向けの小売がスタート。観光客でも買い物や食べ歩きを楽しめます。

唐戸市場の基本情報
一般向け営業時間(※店舗により異なります)
・月~土:早朝5時頃~15時頃
・日・祝:8時~15時頃
週末イベント「活きいき馬関街(ばかんがい)」
・金・土:10時~15時頃
・日・祝:8時~15時頃
数年前に訪れた際は、各鮮魚店で刺身や握り寿司、フグ汁、天ぷらなどが販売されていました。お寿司は一貫から購入でき、海を眺めながらビール片手に新鮮な魚介類を堪能できます。現在の販売形態は確認できていませんが、公式ホームページを見る限りでは、大きく変わっていなさそうです。
※「15時まで」と案内されていますが、市場なので品物がなくなり次第終了となります。しっかり楽しむのであれば、遅くとも10〜11時頃までの到着がおすすめです。
🚌【福岡〜唐戸】の場合
高速バス”ふくふく号”
所要時間:約1時間40分
運賃:1700円(片道)
下関市内や門司港レトロをあわせて観光するなら「ふくふくレトロきっぷ」の利用がおすすめです。
🚃【小倉〜唐戸】の場合
①JR鹿児島本線(小倉駅〜下関)
所要時間:約15〜20分
運賃:340円
②路線バス(下関〜唐戸)
所要時間:約7分
運賃:260円
バス停「唐戸」下車、徒歩約5分
イベント開催の週末に行ければ良かったのですが、今回は同居人の休みに合わせて火曜日に訪問。「朝イチで行こう!」と意気込んでいたものの、ふたりそろって二日酔いで起きられず(笑)、到着したのは12時頃でした。その結果、市場内のほとんどのお店はすでに営業終了…。

市場が営業終了していても、唐戸市場の2階や、隣接する商業施設「カモンワーフ」では新鮮なフグを比較的リーズナブルに楽しむことができます。周辺にはアフターヌーンティーを楽しめる旧英国領事館や水族館など見どころもたくさん。興味のある方は、カモンワーフ公式ホームページ内の【周辺案内】をご参照ください。
唐戸市場のフグ
フグの有毒部分を除去し、可食部のみの状態にすることを「身欠き(ミガキ)」と呼びます。唐戸市場には玄界灘や瀬戸内海など近海で水揚げされたフグが持ち込まれ、有資格者によって処理された「ミガキ処理品」として全国各地へ流通するシステムが整っています。
そのため、漁獲量が減少した現在でも、唐戸市場では比較的リーズナブルにフグを購入することが可能です。…とはいえ、やはり安易に手が出せるお値段ではありません。

そこで、私たちが挑戦したのがこちら。【吉田水産】さんの「ふぐガチャ」です!

こちらは無人営業のため、市場終了時間まで購入可能。1回3,000円(税込)のハズレ無しで、いちばん下の「N(ノーマル)」ランクでも刺身皿3枚分は確実に入手できます。
2階の市場食堂にも惹かれましたが二日酔いで食べられそうになく(笑)、家でフグを堪能することにして帰路につきました。それでも関門海峡を眺めたり、福岡市内では見かけない加工品を買い回ったりと、十分に楽しむことができました。飲み過ぎに気をつけて、また訪れたいと思います。
家でフグを楽しむ
ふぐガチャの結果は…下から2番目の「HN(ハイノーマル)」でした(笑)。
鍋にするほどの量ではなかったので、同居人にはお刺身のまま楽しんでもらいました(私は生魚が苦手なので…)。

Fugu may feel a bit luxurious for everyday home cooking, but this playful format makes it easier to enjoy.
【下関酒造】フグのひれ酒
私のお楽しみはフグのひれ酒。購入したものとふぐガチャに入っていたものに加え、以前友人から大分県佐伯市のお土産(とらふぐ専門卸問屋の柳井商店さん)としてもらっていたものもあり、ひれ酒が3種類もそろいました。飲み比べしようと思い、まずは本日購入した【下関酒造】さんのヒレ酒からいただくことにしました。

すでに日本酒が入っているタイプなので、蓋を開けてレンジ600Wで1分。普段、日本酒をレンジ燗するときはこれくらいが好みなのですが、ヒレ酒は熱々のほうが美味しいので、さらに40秒ほど加熱しました。茶色い出汁が出ていかにも美味しそうです。マッチで火を付けて表面上のアルコールを飛ばしても良いのですが、今回はそのままいただきました。

出汁の旨みがやや甘めのお酒によく合います。濃厚な味わいでつまみいらず。ゆっくりと飲み干し、もう一度日本酒を足して同じようにレンジ加熱しましたが、二杯目でもしっかり出汁がでます。さすが、とらふぐのヒレですね。あってほんの少し塩を加えるとぐっと旨みが増して、より美味しくいただけます。飲み比べするつもりでしたが、旨みがたっぷり過ぎて、これ一本ですっかり満足してしまいました。
【ふるさと納税】山口県・下関市
私が購入したのは、かわいらしいフグのイラストが描かれた白磁タイプのカップですが、リーズナブルな透明ガラスタイプもあります。1個から購入できるほか、まとめ買いや贈答用にはふるさと納税という選択肢もあります。とくに白磁タイプは箱入りなので贈り物にも良さそうです。気になる方は、ぜひ下のリンクからチェックしてみてください。
👇️ふるさと納税にはこちらのサイトもおすすめです

フグの薬膳効能

フグには「身体を温め、消耗した身体を穏やかに補う」作用があるとされます。
冷え切った身体でフグのヒレ酒をいただいた夜、お腹の中からぽかぽかと温まり、旅の疲れがふ〜っとほどけていくのを感じました。もちろん熱燗にした影響も大きいと思いますが、寒さや疲労感がやわらぎます。残りのヒレ酒2種類は、寒い日の外仕事を終えたあとのご褒美にしようと思っています。
フグは脂質が少なく、ホロっとした独特な歯応えが特徴の魚です。低脂肪・低カロリー・高タンパクで、高齢の方や子ども、胃腸が弱い方でも摂り入れやすい食材とされています。
とくに鍋にすると、身や皮に含まれる栄養成分(海洋性コラーゲンなど)が水に溶け出し、旨みの強い出汁になります。フグの出汁には疲労回復効果で知られるタウリンなどが含まれ、鍋や汁物にして食べると弱った身体にもすっと染み込んでいきます。
こうした性質から、フグは消耗した身体を滋養する『補虚損』の食材とされ、『補気』よりもマイルドなかたちで『気』を補ってくれると考えられてきました。
※ただし生食(刺身)は身体を冷やすため、胃腸が弱い方には加熱がおすすめです。
また『祛湿』とされる点についてですが、ハトムギや小豆のように、体内の水分を直接排出する作用があるわけではありません。
『脾』が弱ると『運化』機能が低下し、水分が体内に滞る『水湿内停』の状態に陥りやすくなります。フグは脾を温め・補う作用があるため、この『運化』機能を立て直すことにつながり、結果として水分代謝を整えると考えられます。
おすすめの薬膳書籍
薬膳の効能は、書籍によって記載内容が異なることがよくあります。これは薬膳が、数千年にわたる人々の実践と経験の積み重ねで発展してきた学問だからこそ。そんなとき頼りになるのが『先人に学ぶ 食品群別・効能別 どちらからも引ける 性味表大事典 改訂増補版』。
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