このブログでは、季節に応じた薬膳食材をご紹介しています。
2025年11月7日(立冬)〜12月22日(冬至)の期間を『初冬の薬膳』としてご案内しています。
豆乳ができるまで
豆乳は大豆から作られる飲み物です。
日本ではもともと”豆腐を作るための材料”として扱われてきました。
豆乳そのものを飲み物として楽しむようになったのは、比較的新しい習慣です。

【豆腐ができるまで】
①大豆を水に浸し、やわらかくなるまで戻します。
②戻した大豆に水を加え、すりつぶします。
③②を加熱します。
④③を布などで濾し、液体の「豆乳」としぼりかすの「おから」に分けます。
⑤豆乳に凝固剤を加えてよく混ぜます。
⑥型に流し入れ、軽くプレスして余分な水分を抜き、固めます。
豆乳の歴史
「大豆」の記事で触れたように、大豆は仏教による肉食忌避が広がった飛鳥・奈良時代に、貴重なタンパク源として加工技術が発達しました。はじめは味噌や醤(ひしお)といった発酵食品に加工されていましたが、平安〜鎌倉時代になると中国から豆腐が伝わり、貴族や僧侶の間に広まりました。

実は豆腐の起源ははっきりしていません。漢の時代に中国で生まれ、遣唐使を通じて日本に伝わったとする説が有力です。
日本で豆乳が飲料として一般に広まったのは戦後しばらく経ってからで、本格的に普及し始めたのは1970年代前後とされています。当初は”牛乳を飲むとお腹がゆるくなる人の代替飲料”という位置づけで、豆腐屋さんの店先で少量が販売される程度でした。

1979年に紙パックの豆乳商品が登場し、1981年に清涼飲料基準のJAS規格が設定されると、「第一次豆乳ブーム」と呼ばれるほど生産量が急増しました。ただし、大豆特有の青臭さが一般には受け入れられにくかったことに加え、メーカーの過剰参入による品質のばらつきといった課題もあり、ブームは長続きしませんでした。
その後、多くの企業が味の改良やフレーバー商品の開発に取り組み、健康志向の高まりも追い風となって、2000年代以降は日常的に楽しめる飲み物としてすっかり定着しています。
豆乳の種類とおすすめの豆乳
豆乳の種類
豆乳はJAS規格により、無調整豆乳・調整豆乳・豆乳飲料の3種類に分類されます。

主に大豆固形分量と添加物の有無で区別されます。

🥛無調整豆乳
大豆固形分8%以上、大豆タンパク質3.8%以上が基準。
大豆と水のみで作られ、添加物は加えられていません。大豆本来の風味をそのまま味わえる一方で、人によってはそれを”青臭さ”と感じることもあります。タンパク質や不飽和脂肪酸、イソフラボンなど大豆に含まれる栄養素をしっかり摂りたいときに向いています。
🥛調整豆乳
大豆固形分6%以上、大豆タンパク質3%以上が基準。
無調整豆乳に砂糖、塩、植物油脂などを加えて飲みやすく整えたタイプです。カルシウムやイソフラボンなどが強化されている商品もあります。
🥛豆乳飲料
大豆固形分が4%以上〜6%未満(果汁入りの場合は2%以上)が基準。
調整豆乳をベースに、フルーツやココア、コーヒーなどのフレーバーを加えた清涼飲料水です。健康飲料というより、ジュース感覚で楽しめる“嗜好飲料”として位置づけられます。
【ふくれん】成分無調整豆乳
実家では豆乳どころか牛乳を飲む習慣さえなかったのですが、今ではストックが減るとそわそわするほど豆乳好きになりました。
きっかけは、以前「麹甘酒」の記事でご紹介した【ぶんご銘醸】さんの甘酒。とても美味しいのですが、夏場は少し重たく感じることもあり、豆乳で割ってみたところこれが大当たり!もともと豆腐が好物なので今考えるとあたりまえなのですが、当時は豆腐と豆乳が結びついてなかったんですよね。
私のイチオシは【ふくれん】の成分無調整豆乳。福岡県朝倉市に本社を置き、JA全農ふくれんの子会社として、国産原料(とくに福岡県産)を主体に飲料・食品加工事業を展開しています。小学校の給食にもよく【ふくれん】のオレンジジュースが登場していました。

【ふくれん】の豆乳があまりに美味しかったので、「私は豆乳が好きなんだ」と思い込んでいましたが、ほかのメーカーの商品を試してみて、【ふくれん】の豆乳「が」好きだということに気づきました。
長らく【ふくれん】を飲み続けてきたおかげで今ではどんな豆乳も美味しく感じられるようになりましたが、やはり【ふくれん】のストックは欠かせません。
ふだんは近所のスーパーで【ふくれん】無調整豆乳のCGC商品を購入していますが、買い物に行く時間がないときは楽天市場を利用しています。
福岡県の大豆「ふくゆたか」と「ふくよかまる」
以前は【ふくれん】の豆乳パッケージに「九州産ふくゆたか大豆 成分無調整豆乳」と書かれていたのですが、現在は「九州産大豆 成分無調整豆乳」という表記に変わっています。
「ふくゆたか」は福岡県が開発した大豆品種で、豆乳や豆腐に適した甘みとコクのある味わいが特徴です(福岡県は大豆の生産が盛んで、生産量は全国でも上位に入ります!)。

その「ふくゆたか」の後継品種として、新たに開発されたのが「ふくよかまる」。令和4年度から一般栽培が始まり、令和7年度には県全体として「ふくゆたか」から「ふくよかまる」へ全面切り替えが行われています。
その流れを受けて、【ふくれん】でも現在は福岡県産の大豆には「ふくよかまる」、その他の九州エリアの大豆には「ふくゆたか」の2種類を使用し、パッケージ表記を「九州産大豆」にリニューアルしたと公式サイトで説明されています。
「豆乳に合う大豆」へのこだわりが詰まった【ふくれん】の成分無調整豆乳。本当に美味しいので、ひとりでも多くの方にお試しいただけたらうれしいです。
―― 参考リンク ――
福岡県公式サイト:大豆の新品種「ふくよかまる」について
(出典:福岡県 農林水産部 水田農業振興課 / 更新日:2025年11月20日)
私の体質と豆乳
実は、豆乳は私の体質にはあまり合いません。私は『湿』を溜め込みやすい体質なので、身体を潤す作用の強い食材を摂りすぎると、頭痛やめまい、吐き気、軟便、鼻水などの症状が出やすくなってしまうんです。
本当は控えたほうが良いのですが、「鶏レバー」の記事で好き嫌いについて触れたように、健康のためとはいえ苦手なものを無理に食べたり、好きなものを我慢し続けたりするのは、私にとってはストレスでしかありません。
食事は美味しく食べられることがいちばん。豆乳もお酒と同じく”嗜好品”と割り切って楽しむことにしています。
ただしそのまま何も考えずに飲むと身体に負担をかけてしまうため、自分なりのルールを決めています。私はかなり偏食気味ですが、薬膳の知識があるおかげで、偏った食材選びでも身体への負担を抑える工夫ができ、いまのところは元気に暮らせています。
🥛量を控える
(私の場合)一日最大200ccまで
🥛時間帯を決める
中医学には「日中=『陽』が盛ん/夜=『陰』が増す」という概念があります。つまり潤いを補う『陰』性の食材を夜に摂ると作用が強まりやすいと考えられるため、私はなるべく日中〜夕方までに飲むようにしています。
🥛季節を決める
乾燥しやすい初冬〜春先にかけては、ふだん控えている”潤い食材”を解禁しています。豆乳は一年中楽しんでいますが、この時期だけは量をやや増やしたり、夕食のメニューに摂り入れたりと、少しルールをゆるめます。
🥛温めて飲む
『湿』を生みにくくするには「過剰な水分を控えること」と「お腹を冷やさないこと」が大切だとされています。豆乳は平性(身体を温めも冷やしもしない)ですが、冷たい状態で飲むとやや涼性寄りになるため、豆乳を飲む時は必ず温かい状態でいただくようにしています。
※食材の効能や食性は、書籍によって記載内容が異なることがよくあります。
🥛温性の食材と合わせる
上記に加え、シナモンや乾姜、お酢、甘酒、紅茶といった温性の食材を一緒に摂り入れるようにしています。料理に使用するときは『脾』を温める作用のある鮭やかぼちゃとの組み合わせもおすすめです。
おすすめの豆乳レシピ
鹹豆漿(シェントウジャン)
「酢」でもご紹介しましたが、温めた豆乳にお酢を加えて作るスープのような台湾の定番朝ごはんです。本来はトッピングを楽しむ料理ですが、私はシンプルにネギとかつおぶしを乗せることが多いです。
たまに「うまく固まらない」という声を聞きますが、大豆固形分(豆乳の濃度)が高いほど固まりやすくなります。いつもは【ふくれん】の無調整豆乳(大豆固形分9%)で作りますが、たまにお豆腐屋さんの豆乳(一般的に10〜14%)で作ると、おぼろ豆腐のように固まりやすくなります。近くにお豆腐屋さんがない場合は、「高濃度」をうたっている無調整豆乳で試してみてください。

①容器に酢小さじ2、「名水のたましずく」小さじ1を入れる。
②無調整豆乳を沸騰直前まで温め、①の容器にそっと注ぐ。
※電子レンジの場合は、ラップをかけずに600wで約2分が目安です。
豆乳鍋

①鍋に「くばらあごだしつゆ」50ccと水400ccを入れ、軽く煮立てます。
②薄切りの豚肉や鶏だんごなど、好みの肉類を加えて火を通します。
③豆乳を好きなだけ加えて温め(あまり強く沸騰させないのがコツ)、野菜を加えます。
豆乳の薬膳効能

豆乳には「身体(とくに肺)を潤す作用」があるとされます。
豆乳の代表的な働きは『生津(せいしん)』。
その名の通り『津液(体内の水分の総称)』を生み出す働きです。
『津液』が不足すると唇・肌・目・喉など身体の”表側”から乾燥が目立ってきます。
前回ご紹介した大豆が『補気(+潤い)』だとしたら、豆乳は『潤い(+補気)』が主役。
大豆の粒が砕けて細胞壁が壊れ、タンパク質や脂質が水に溶け出した「どろっとした白い液体」は、”飲む大豆”とも言えます。固体の大豆はどっしりしていて、下腹や腸など”身体の下の方”に届くイメージですが、液体になった豆乳は軽くなり、”身体の上の方”つまり『肺』に働きかけやすくなります。
「初冬の薬膳」でも触れたように、『肺』には『津液』をスプリンクラーのように全身へ散布する『宣発(せんぱつ)』という働きがあるため、『肺』を潤す(=『肺』に散布用の水をたくさん届ける)食材は皮膚や粘膜をしっとり保つ作用を持ちます。

ちなみに皮や繊維が主体となった“おから”は大豆よりさらに「固形寄り」の食材。腸にしっかりと作用して、便通をスムーズにする働きがより強くなります。
また、繊維が少ないぶん、豆乳は身体への負担が少なくスッと吸収されやすいのもポイント。弱った体や消耗した体を滋養する『補虚損』の食材として、『補気』よりもマイルドなかたちで『気』を補ってくれます。

ただし、飲み方には少し注意が必要。冷たいままゴクゴク飲んでしまうと、どうしてもお腹を冷やしてしまいます。”冷え”と”多量の水分”は『脾』の負担となり、『運化(消化・吸収・水分代謝)』の働きが落ちて、『内湿』を生じる原因となります。
もともと潤いパワーの強い豆乳は、むくみや重だるさなど『水湿』のサインが出ているときには控えめにしておくのが無難です。『水湿』を放置するとやがて『痰湿(たんしつ)』へと変化し、さまざまな病理を引き起こしてしまいます。
なお、豆乳にはねばついた痰をやわらげて除く『化痰』の作用もありますが(書籍によります)、これは『燥痰(乾燥で痰がねばついて出にくくなっているタイプ)』に対しての話。『脾虚』による『水湿内停(すいしつないてい)』タイプの痰には合わず、かえって逆効果となる場合があります。
| 痰のタイプ | 寒と熱 | 舌 | 原因 | 痰の状態 | 必要なアプローチ |
| 湿痰(しったん) | 寒 | 苔が白、歯痕(しこん) | 脾気虚 | 白〜透明、とろとろ、コ゚ホンと出る | 脾のケア(温める、水分を控えるなど) |
| 燥痰(そうたん) | 熱 | 紅 | 乾燥・熱・津液不足 | 黄色、ネバネバ、出にくい | 潤して滑らかにし、出しやすくする |
おすすめの薬膳書籍
薬膳の効能は、書籍によって記載内容が異なることがよくあります。これは薬膳が、数千年にわたる人々の実践と経験の積み重ねで発展してきた学問だからこそ。そんなとき頼りになるのが『先人に学ぶ 食品群別・効能別 どちらからも引ける 性味表大事典 改訂増補版』。
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