このブログでは、季節に応じた薬膳食材をご紹介しています。
2025年5月5日(立夏)〜6月11日(入梅)の期間を『初夏の薬膳』としてご案内しています。
ミントの雑学
ミントの種類
ミントはシソ科ハッカ属の植物の総称です。
簡単に交雑してしまうため分類が難しく、かつては600種以上あるとされていましたが、現在は40種程度に整理されています。
代表的なものは「ペパーミント」「スペアミント」「薄荷(ハッカ)」の3種類。それぞれ香りや風味、含まれる成分が異なるため、用途にも個性が出ます。
🌿ペパーミント
学名 Mentha piperita(メンタ・ピペリタ)
スペアミントとウォーターミントの自然交雑種。
主成分はメントールとメントンで、スーッとした強い清涼感が特徴。ガムや歯磨き粉など、爽快感を活かした製品によく使われています。
🌿スペアミント
学名 Mentha spicata(メンタ・スピカタ)
ペパーミントの“親”にあたる品種。
主成分はカルボンとリモネン。香りは穏やかで、ほんのり甘みもあり、料理やハーブティーに使われることが多いです。
🌿薄荷(ハッカ)
学名 Mentha canadensis(メンタ・カナデンシス)
日本で古くから親しまれてきた和製ミントで、「和ハッカ(ニホンハッカ)」とも呼ばれます。
メントールの含有量が多く、3種の中でも特に清涼感が強め。ハッカ飴やハッカ油など、どこか懐かしい香りとして親しまれている方も多いのでは。
ミントの歴史
世界では
ミントの利用は、今から約4000年前(紀元前2000年頃)の古代メソポタミアやエジプトにさかのぼります。楔形文字の記録から、芳香植物のひとつとして料理や薬用、香油などに使われていたことが分かっています。
地中海沿岸では、今から約3500年前(紀元前1500年頃)からミントの栽培が始まり、古代ギリシャやローマ時代には生薬や香料として広く利用されました。古代ギリシャでは「医学の父」ヒポクラテスも健胃薬として処方したと伝えられています。ローマ時代には、食後の口臭予防や気付け薬としても活用されていました。
ヨーロッパでは長らくスペアミントが主流でしたが、18世紀にイギリスでペパーミントが認識され、本格的な栽培が始まりました。イギリスの自然学者ジョン・レイがペパーミントの薬効(下痢の治療に良い)を紹介したことで広まり、現在ではアメリカが主要な産地となっています。
中国・日本では
中国でも古くからミントが生薬として用いられており、今から約2000年前(紀元前1世紀頃)の薬物書「神農本草経(しんのうほんぞうきょう)」などにその記載があります。当時、使われていたのは、現在のニホンハッカやスペアミントに近い品種だと考えられています。
日本には、もともと在来のミント類が自生していましたが、現在広く知られている「和ハッカ(ニホンハッカ)」は中国から伝わった品種が主流です。
平安時代の薬物辞典「本草和名」や百科辞典的文献「倭名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)」にも「薄荷」として登場し、薬用だけでなく山菜として食用にもされていたことがうかがえます。
江戸時代末期にはスペアミント(オランダハッカ)が、明治時代にはペパーミント(西洋ハッカ)が導入され、いずれも広く利用されるようになりました。これにより、日本の薄荷栽培も多様性し、交雑も進んでいきました。
日本のミントの産地
日本でミント(薄荷)の栽培が本格化したのは、江戸時代後期とされていますが、記録として明確に残っているのは明治時代以降です。明治時代には、岡山県をはじめとする本州各地で栽培が行われていましたが、主産地は次第に北海道へと移っていきました。
特に、明治30年代に北海道北見地方で開拓民や屯田兵による大規模な薄荷栽培が始まり、北見の気候が栽培に適していたことから、急速に産業が発展しました。当初は副業として始まった栽培も、やがて地域の主要産業へと成長していきました。
昭和初期には、日本は世界最大の薄荷輸出国となり、最盛期には世界シェアの約70%を占めていたとされています。
その後、第二次世界大戦や海外産・合成薄荷の台頭により、国内の薄荷産業は衰退してしまいましたが、現在でも北見市は「薄荷の名産地」として知られ、観光や地域振興の一環として再び注目を集めています。
おすすめのミント商品と使用方法
ミントは日当たりが良く、ほどよく湿った場所を好む多年草です。
寒さに強く、繁殖力・交配力も旺盛なため、ガーデナーの間では「決して庭に直植えしてはいけない植物」として知られています。実は以前、庭付きの家に住んでいたとき、知らずにスペアミントを植えてしまい大変なことになった経験があります。
それでも当時は洋酒派だったため、モヒートに、ハイボールに、ミントジュレップに…と重宝していました。今なら確実に持て余しています。
今は購入してまで生葉が欲しいとは思いませんが、ミントグッズは日常生活に欠かせません。特に気に入っているものを、いくつかご紹介します。
【ease】ペパーミント精油
AEAJ(日本アロマ環境協会)表示基準適合認定の純正ペパーミント精油。
市販のペパーミント精油の中にはコーンミントをブレンドしたものもありますが、こちらは100%純正なペパーミント由来です。清涼感の中に、やわらかな甘さも感じられます。
- 冷却&鎮痛作用があるため、ジムのあとのお風呂に1滴入れて「エアーサロンパス風呂」に(※1滴で十分!数滴入れると寒くて入っていられません)。
- 寝苦しい夏の夜、クーラーなしで乗り切りたいときもおすすめ(お湯の温度は38℃くらいが最適)。
- 殺菌作用もあるため、アロマスプレーにしてキッチンの拭き掃除に活用。
- 虫除けとして、玄関や網戸にもスプレーしています(蚊・ゴキブリ・クモに効果あり)。

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【北海道・北見市】ハッカ油
100%天然由来の精製ハッカ油。
【ease】が”家用”なのに対し、こちらは外出用としてポーチに常備しています。ポケットサイズのスプレーで、デザインも可愛らしく、長年愛用しています。
こちらの商品は、【ふるさと納税】がおすすめです!
- 頭痛時にこめかみとうなじにスプレーして軽く揉みます。私はこのスプレーのおかげで、だいぶ鎮痛剤の量を減らせました。イライラしたときのクールダウンにもおすすめ。
- 山歩きの際、全身にスプレーしておくと「私の周りだけ虫が来ない!」と驚くほど。まるで目に見えないバリアのよう。
- マスクやハンカチにつけて嗅ぐと、脳がシャキッとして集中力もアップ。眠気覚ましにも効果的。受験生への贈り物にも良さそうです。
【北海道・北見市】ハッカ湯
ニホンハッカを配合したバスソルト。
【ease】を使用した「スーッと爽快な」エアーサロンパス風呂とは対象的に、こちらは精神的に疲れた日のご褒美風呂として使っています。ほのかなハッカの香りと、きれいなミントグリーンのにごり湯。しっかり温まり、穏やかな気持ちで眠れます。
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【テーカンネ(ポンパドール)】ペパーミントティー
すっきりした香りと爽やかな風味のペパーミントティー。
生葉のミントティーも美味しいのですが、私は「今すぐ飲みたい!」というタイミングが多いため、こちらを常備しています。
- 頭痛時に、ストレートで。
- 熱っぽい時に、はちみつを加えて。症状が和らぐ気がします。
- 喉が痛いときは、ミントティーをゼラチンで固め、はちみつ+レモン汁のシロップをかけて。腫れた喉でもツルンと食べられます。

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ペパーミント精油を使用する際の注意点
ペパーミント精油は爽やかで便利な反面、使い方にはいくつか注意が必要です。安全に楽しむために、以下のポイントを参考にしてください。
• 妊婦・授乳中の方や、乳幼児には使用を避けてください。
ペパーミント精油には子宮を収縮させる作用があるため、妊婦さんや授乳中の方への使用は推奨されていません。
• 高血圧の方も使用を控えてください。
一部の報告では、血圧に影響を及ぼす可能性が指摘されています。
• まずは部分使用から。
ペパーミント精油は皮膚や粘膜への刺激が強いため、敏感肌の方や初めて使用する方は、まず足湯など部分的な使用から試し、刺激や違和感を感じた場合はすぐに使用を中止してください。
• 原液は直接肌につけたり、飲用しないでください。
精油は高濃度の成分を含むため、必ず希釈して使用してください。直接の飲用や、食品の殺菌目的での使用は避けてください。
• 子どもへの使用には特に注意を。
小さなお子様には使用を控え、12歳未満の子どもに使用する場合は大人よりもさらに希釈濃度を下げるか、基本的には使用を避けてください。
ミントの薬膳効能

ミントには「体を冷やしながら発汗を促す『辛涼解表(しんりょうげひょう)』」の作用があるとされています。
現在、生薬として使われているのは主にニホンハッカなどのミント類で、生薬名は「薄荷」です。
発熱を伴う風邪の初期や、芳香性健胃薬として用いられます。
中医学では、風邪は大きく2つのタイプに分けられます。
【風寒タイプの風邪】
• 原因は『寒邪』が背中や首の皮膚・毛穴から侵入することによる。
※これを『外感風寒(がいかんふうかん)』といいます
• 主な症状は、ゾクゾクする悪寒、発熱、頭痛、首筋のこり、体の節々の痛み、くしゃみ、薄い鼻水、薄い痰や咳など。
• 発熱していても寒気が強いのが特徴。体を温め、発汗を促して寒邪を追い出すことが大切です。
• 初期治療の原則は、体を温めて発汗を促す『辛温解表(しんおんげひょう)』。
【風熱タイプの風邪】
• 原因は『熱邪』が鼻や喉の粘膜から侵入することによる。
※これを『外感風熱(がいかんふうねつ)』といいます
• 主な症状は、のどの痛みや赤み・腫れ、黄色く粘り気のある痰、咳、発熱、口や鼻の乾燥、濃い尿、のぼせなど。
• 体を冷やして、炎症を鎮めることが大切です。
• 初期治療の原則は、体を冷やしながら発汗を促す『辛涼解表(しんりょうげひょう)』。
ミント(薄荷)には、この『辛涼解表』の作用があります。
つまり「冷やしながら発汗させる」イメージで、体内の余分な熱を体表から放散し、自然な発汗を促す働きがあります。この作用により、風熱タイプの風邪や、のぼせ・イライラなど熱感を伴う症状に適しています。
具体的には、ミントに含まれる成分には毛細血管を拡張させる作用があり、体内の熱を皮膚表面から逃がすことで体温を下げる助けとなります。そして、この過程で自然に発汗が促されます。
一方、「辛温解表」とは体を温めて毛穴を開き、発汗によって寒邪を追い出す方法です。目的も適応も異なるため、風邪のタイプに合わせて使い分けることが大切です。
おすすめの薬膳書籍
薬膳の効能は、書籍によって記載内容が異なることがよくあります。これは薬膳が、数千年にわたる人々の実践と経験の積み重ねで発展してきた学問だからこそ。そんなとき頼りになるのが『先人に学ぶ 食品群別・効能別 どちらからも引ける 性味表大事典 改訂増補版』。
複数の古典書をもとに、1184種類の食材が掲載されており、薬膳を実践するならぜひ手元に置いておきたい一冊です。
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