このブログでは、季節に応じた薬膳食材をご紹介しています。
2025年9月23日(秋分)〜11月7日(立冬)の期間を『秋の薬膳』としてご案内しています。
いちじくの雑学
いちじくの旬
福岡では、いちじくは7月頃から少しずつ出回り始め、9〜10月になると店頭にたくさん並ぶようになります。「旬が長い果物だな」と思っていたのですが、実は年に2回の旬があるそうです。
夏に実をつける「夏果(かか)」は梅雨時期に収穫されるため傷みやすく、流通量は少なめ。一方8〜10月に実る「秋果(しゅうか)」は品質も安定しており、メインで栽培されています。そのためすっかり「いちじく=秋の果物」というイメージが定着しました。

いちじくの原産地
いちじくの原産地はアラビア半島から西アジア、そして地中海沿岸にかけての地域。現在でもトルコやイランなどが主な生産国となっており、トルコでは岩場や崖にも野生のいちじくが自生しているそうです。なかでもエーゲ海沿岸の都市イズミールは、ドライいちじくの名産地として知られています。
このあたりは日差しが強く、カラッと乾いた空気が特徴の地中海性気候。日本のように湿度が高い環境はあまり合わず、とくに梅雨時期の出荷が難しいのも納得です。
いちじくの世界史
約1万年前のイスラエルでドライいちじくが発見されたことから、いちじくは”人類が最も早く利用した果樹”のひとつだと考えられています。
紀元前4000年頃にはメソポタミアや古代エジプトで本格的に栽培が始まり、やがて地中海沿岸に広まって、ギリシャやローマでは主食のひとつとして親しまれました。
聖書や神話にも登場していることから、古代の人々にとっていちじくは食料であり、信仰の象徴でもあったことがうかがえます。

その後ローマ帝国の拡大にともなってヨーロッパ各地へ広がり、さらにシルクロードを通じてアジアにも伝わりました。この広がり方は、同じく地中海からシルクロードを旅した「ぶどう」ともよく似ています。片方がワイン文化を、もう片方が薬用と食文化を運んだといったところでしょうか。
唐の時代(8世紀頃)には中国に伝わり、「无花果(无=無)」の名で知られるようになりました。当初は果実や葉を煎じて飲むなど薬用としての利用が中心でしたが、明代(14世紀)には南部を中心に果物として栽培されるようになりました。明代の薬学書『本草綱目』には「喉を潤し、便通を促す」といった効能が記されています。
いちじくの日本史
日本へは16世紀末から17世紀初頭にかけて伝わりました。ペルシャから中国を経て長崎に伝わったという説が有力で、中国と同じく薬用としての使用が主だったようです。
いちじくの栽培には虫を媒介とした受粉が必要なのですが、日本にはその虫が生息しておらず、当時はあまり普及しませんでした。
のちに中国から受粉を必要としない品種「蓬莱柿(ほうらいし)」が持ち込まれ、国内栽培の主流となりました。蓬莱柿が広く栽培されたことで、いちじくは甘味を楽しむ果物としても親しまれるようになり、挿し木で簡単に増やせることから庭木としても人気となりました。
明治時代にはアメリカから「桝井ドーフィン」などの品種が導入されました。「実が小さく、果皮が薄くて裂けやすい」蓬莱柿に対して、桝井ドーフィンは「実が大きく、収量が多く、果皮が丈夫で輸送に強い」のが特徴。そのため桝井ドーフィンが蓬莱柿に代わって主流となり、現在も日本の栽培面積の7〜8割を占める主要品種となっています。
いちじくの生態
※虫が苦手な方は、このセクションは目次から読み飛ばしてください🐝
いちじくは漢字で書くと「無花果(花のない果実)」。こちらの画像のように、花を咲かせずいきなり実をつけるように見えます。

しかし実際には、いちじくの果実の中に花が隠れており、食べている部分そのものが花でもあるのです。いちじくを切ると中に白い粒状の部分が見えますが、それが小さな花。花が果実の中で咲くという、少し変わった構造になっています。

この果実(正確には”花嚢(かのう)”)の内部には、小さな花がぎっしりと並んでいます。原産地周辺では、この花の中に「イチジクコバチ」という小さなハチが入り込み、花粉を運んで受粉を助けています。
コバチは雄花の中に卵を産み、孵化した幼虫は花の中で成長します。やがて成虫になると、雄は雌が外へ出るための穴を開けて力尽き、雌は花粉を体に付けて次のいちじくへと飛び立ちます。いちじくとコバチは、互いの生存を支え合う共生関係にあるのです。
市販のドライいちじくの多くはトルコやイラン産で、こうした虫媒介型の品種が使われています。もちろん出荷の段階でコバチはほとんど分解されており、衛生的に問題はありません。

ちなみに日本で栽培されているいちじく(蓬莱柿や桝井ドーフィン)は単為結果性をもつ品種で、受粉を媒介する虫がいなくても実をつけることができます。
ドライいちじく
いちじくの原産地周辺では、デーツや干しぶどうに代表されるように、古くから乾燥果実の文化が育まれてきました。

現地では乾いた気候を活かし、完熟したいちじくをそのまま樹上で自然乾燥させる伝統的な方法がとられています。生のいちじくはあまり日持ちしませんが、乾燥させることで保存性が高まり、長距離の輸送が可能になります。日本で流通しているドライいちじくも、多くがトルコやイランからの輸入品です。
トルコ産は「スミルナ種(サーリロップ)と呼ばれる白いちじくが主流。皮が薄くて甘味が強く、やわらかいのが特徴です。イラン産はトルコ産に比べ小ぶりで、乾燥度が高く、コロンとしてやや硬めの食感です。
私は断然トルコ産派。果肉(正確には”花嚢(かのう)”)たっぷりでねっとりと濃厚。1個でも十分食べごたえがあります。
【ナッツとドライフルーツの専門店・小島屋】トルコ産ドライいちじく
おすすめは「ナッツとドライフルーツの専門店・小島屋」さんのドライいちじく。
1956年創業の老舗で、上野アメ横に実店舗を構えています。現在は三代目の小島靖久さんが経営されており、 「おいしくて体にいいものを、楽しく続けられる形でお届けする」ことを理念に掲げ、世界中の農園や生産者と直接つながり、素材の選定から加工まで一貫して行っています。東京に行く機会があると、必ず立ち寄りたくなるお店のひとつです。
普段は楽天市場を利用していますが、オンラインでも実店舗と同じ丁寧さを感じます。
こちらのトルコ産ドライいちじくは780gで3,790円。一般的な相場よりややお高めですが、店主が現地に赴いて厳選した大粒のスミルナ種を使用しており、「無添加・無漂白・やわらか仕上げ」と加工の工程にもこだわりが感じられます。私にとっては”ご褒美おやつ”。とっておきの時間にゆっくり味わいたくなる逸品です。
小島屋さんのレシピ提案もとても参考になります。なかでも、ドライいちじくにくるみをはさんでオーブンで焼く「ドライフィグ」はワインや日本酒のお供に最高です!ぜひ以下のサイトからチェックしてみてください。
→楽天市場はこちら→Yahoo!ショッピングはこちら
【大ちゃん農園】ホーライドライ
国産の美味しいドライいちじくをお探しの方には、福岡県京都郡みやこ町「大ちゃん農園」の「ホーライドライ」がおすすめです。露地栽培の蓬莱柿をじっくり乾燥させたもので、80g×2袋(1,980円)と80g×4袋(3,880円)がありますが、送料は同じなので4袋入りのほうが断然お得です。初めて注文したときは2袋入りを選択してしまい、あまりの美味しさにすぐにぺろりと完食して後悔しました。
製造に時間がかかるため、注文から発送まで少し待つこともあります。また年によっては早めに売り切れてしまうこともありますが、それもまた露地栽培ならでは。年に一度のお楽しみとして、毎年気長に待っています。以下のサイトで「ドライいちじく」と検索してみてください。
生いちじく
日本では採れたてのいちじくをそのまま生で食べるのが主流です。湿度が高く雨の多い気候では、乾燥工程でカビや腐敗が起こりやすいため、ドライよりも生果として消費する方が適しています。
日本で栽培されている主な品種
桝井(ますい)ドーフィン
明治時代に桝井農場の桝井光次郎さんがアメリカから苗木を持ち帰り、全国に広めた品種。日本で栽培されているいちじくの7〜8割を占めます。和歌山県、愛知県、大阪府などが主な産地で、6月頃から秋にかけて長く楽しめる夏秋兼用品種です。
蓬莱柿(ほうらいし)
17世紀前半に中国から伝来したとされる品種。やや小ぶりで果頂部が裂けやすいという特徴がある、そのため輸送にはあまり向かず、ケーキやジャムなどの加工用としてよく利用されます。広島県、香川県、福岡県などで多く栽培され、旬は9〜10月の秋果専用品種です。
ビオレ・ソリエス
フランス南部ソリエス地方原産の「黒いちじく」。黒紫色の果皮と、宝石のように赤い果肉が特徴です。北陸地方を中心に栽培が広がっていますが、実はパイオニアは佐賀県唐津市の富田農園さん。旬は9月中旬〜10月ごろ。
とよみつひめ
福岡県が独自に開発したオリジナル品種で、2006年に品種登録されました。県内のみで栽培される秋果専用品種で、9月に入るとスーパーの果物売り場を彩り、福岡の秋を感じさせる風物詩となっています。
【福岡県/朝倉市】ふるさと納税
私のおすすめはもちろん福岡県産の「とよみつひめ」。「豊前分場の“豊(とよ)”」と「甘い蜜の“みつ”」、そして「姫」のように上品で美しい外観から名付けられたそうです。完熟してから収穫されるため流通期間が短く、県外ではほとんど見かけません。
皮が薄いため皮ごと食べられるのが特徴で、糖度が平均17度以上と甘味が強く、濃厚でジューシー。県内各地で栽培されていますが、やはり福岡で果物といえば、「桃」の記事でも登場した「フルーツの里」うきは市と、そのおとなりの朝倉市です。朝倉市ではふるさと納税の返礼品として、2026年7月上旬~下旬出荷予定の「とよみつひめ」の予約受付が始まっています。
個人的には、福岡の果物といえば「あまおう」より断然「とよみつひめ」派。興味のある方はぜひ下記リンクからチェックしてみてください。
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いちじくレシピ
いちじくトースト
スイーツは作るより買う派なので、自分で作るのは「りんご」でご紹介したトースト程度。それでもバターをしっかり効かせることで、焼きたてはまるでパイのような香ばしさになります。りんごにはシナモンをあわせましたが、いちじくにはラム酒とカッテージチーズでほんのり大人の仕上がりに。

いちじくコンポート
これはもう、私の大好物です。冬の間も食べ続けたいので、毎週末せっせと作ってはコツコツ冷凍保存しています。白ワインとみりんだけで煮るため、仕上がったシロップは思わず飲み干したくなるほどの美味しさ。ポイントはただひとつーー「飲めるくらい美味しいみりんを使うこと」。現在いろいろなみりんを試しているのですが(詳しくは「みりん」の記事をご覧ください)、今回は「白扇酒造」さんの「福純来」を使用してみました。これが本当〜に美味しくできました!

①小鍋に白ワイン150ccを入れ、5〜6分ほど煮詰めます。
②みりん350ccを加え、さらに10分ほど煮詰めます。
③食べやすくカットしてレモン汁をまぶしたいちじくを加え、落し蓋をして5分ほど煮ます。
④火を止めてそのまま冷まします。
【追記】「杜の蔵」の「琥珀の本みりん」にはみりんそのものにブランデーのような風味があり、白ワイン無しで作ったところ、めちゃくちゃ美味しいシロップが出来上がりました。チーズと組み合わせると最高のおつまみになります。分量は水200cc、琥珀の本みりん300cc。
いちじくの薬膳効能

いちじくには「肺と大腸を潤す」作用があるとされています。
中国に伝わった当初、いちじくは薬用として利用されていました。生薬では果実を乾燥させたものを「無花果(むかか)」、葉を乾燥させたものを「無花果葉(むかかよう)」と呼びます。
「無花果(むかか)」は煎じて内服し、便秘や喉の痛みの改善に用いられてきました。「無花果葉(むかかよう)」は入浴剤として使用すると神経痛・痔・婦人病に良いとされます。
薬膳では、生でもドライでも、いちじくには「身体を潤す」作用があるとされ、とくに「大腸を潤して乾燥性の便秘を改善する」「肺を潤して喉の炎症・から咳をやわらげる」などの働きがあるといわれています。
いちじくとアンチエイジング
また西欧では、古くから「不老不死の果物」と呼ばれてきました。
中医学では「老化防止」のアンチエイジングに関係する食材は『肝と腎』に帰経することが多く、「美容」のアンチエイジングに関係する食材は『肝と腎』のほかに『肺』にも帰経することが多い印象です。
中医学では、自然界と人体の関係を『五行(木・火・土・金・水)』に分類して捉えます。この五行を臓腑にあてはめると以下のようになります。
| 五行 | 臓腑 | 五主 |
| 木 | 肝 | 筋 |
| 火 | 心 | 血脈 |
| 土 | 脾 | 肌肉 |
| 金 | 肺 | 皮毛 |
| 水 | 腎 | 骨 |
この表から分かるように、『肺』の五主は「皮毛=皮膚」。つまり、『肺』が潤うと皮膚も潤い、みずみずしく美しい肌を保つことができると考えられています。
いちじくの栄養素
栄養学の観点からみても、いちじくは美容にうれしい栄養素がたっぷり含まれています。とくに食物繊維・ミネラル(カリウム・カルシウム)・ポリフェノールなどが豊富です。
100gあたりの食物繊維量は約1.9g。そのうち水溶性食物繊維(ペクチン)が0.7g、不溶性食物繊維が1.2gとバランスがよく、乾燥させると約10倍の食物繊維が含まれるようになるため、便秘がちの方にはドライいちじくがおすすめです。そのまま食べても良いのですが、ヨーグルトと一緒に食べると整腸作用がさらにアップします。
カロリーは小さめもので10g前後、大きなものだと15〜20gほど。食べ過ぎは糖質過多や肥満につながるおそれがあるため、1日あたり3〜5個程度が目安とされます
フィシン(ficin)
また、いちじくの茎や葉から出る白い液体には「フィシン(ficin)」というタンパク質分解酵素が含まれています。料理中に触れていると指紋が消えるほどの作用があり、古くからイボ・たこ・うおの目の除去やおできの改善などにも用いられてきました。
フィシンは果肉(正確には”果嚢”)にも微量に含まれおり、肉料理にいちじくを加えるとやわらかくなるのはこの酵素のおかげです。タンパク質の分解を助けて消化がスムーズになるため、胃もたれを防ぐ効果も期待できます。
一方で体質によっては手や口まわりが痒くなることがあるため、気になる方は少量からお試しください。フィシンは熱に弱いため、加熱して食べるのもおすすめです。
おすすめの薬膳書籍
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