柿、干し柿

A title image featuring Kaki from my “Autumn Dietary Therapy” series. 秋の薬膳

フルーツの里:うきは市と朝倉市

先日、同居人と休みを合わせて、福岡県のうきは市と朝倉市に遊びに行ってきました。

大分県との県境に位置し、南には耳納(みのう)連山、北には九州最大級の河川である筑後川が流れる自然豊かな地域です。この地形が寒暖差を生み出し、果物づくりに理想的な環境をつくっています。

最大の特徴は「水がきれい」ということ。

なんと、うきは市の約9割では上水道が整備されておらず、各家庭が地下水(井戸水)を自己管理で使用しています。つまり、蛇口をひねればミネラルウォーター。こうした暮らしは、全国的にも非常に珍しいようです。
市内には名水百選に選ばれた「清水湧水」もあり、ひそかな観光スポットとなっています。

A clear spring pool at Shimizu Spring, ringed by stone walls and a small mossy footbridge with dappled light on the water.
One of Ukiha’s famed springs, known for its clear water and tranquil stone-lined setting.

朝倉市では上水道が整備されていますが、筑後川や小石原川、佐田川などの豊かな水流に恵まれ、地下水も豊富。水資源と肥沃な土壌、盆地ならではの寒暖差によって、両市とも古くから果樹栽培が盛んです。果樹園や観光農園が多く、四季折々のフルーツ狩りが楽しめる「フルーツの里」として親しまれています。

JAにじ直営の「にじの耳納の里」や、「道の駅うきは」「道の駅原鶴 ファームステーションバサロ」には、地元産の果物や野菜はもちろん、ジャムやワイン、スイーツなどの加工品も充実しています。

福岡市内から1時間〜2時間ほどとアクセスも良く、日帰りでも十分楽しめますが、美人の湯として知られる「原鶴温泉」や「筑後川温泉」で一泊してのんびり過ごすのもおすすめです。

Hand-drawn map of Ukiha and Asakura in Fukuoka, showing the Chikugo River, Shimizu Spring, Chikugo-Yoshii and Ukiha stations, roadside stations (Harazuru Basaro, Ukiha), the Shiwa area, and Harazuru Onsen.
A quick orientation map for the “Fruits Country” area—stations, roadside markets, Shimizu Spring, Harazuru Onsen, and the Shiwa (Shiwa-gaki) district marked for reference.
アクセス

1️⃣電車で🚃
博多駅〜久留米駅 JR鹿児島本線(約40〜60分)
久留米駅〜筑後吉井駅 JR久大本線(約30分)
駅からは「ひかりタクシー」が便利
吉井地区の白壁土蔵造りの伝統的な町並み散策がおすすめ

2️⃣高速バスで🚌
博多バスターミナル〜杷木 西鉄バスひた号(約70分)
杷木バスセンターからは「朝日タクシー」が便利
筑後川温泉や清水湧水が近く、のんびり川沿いを散歩するのがおすすめ

福岡の柿について

柿の旬

とくに朝倉市は福岡でも屈指の柿の名産地。秋には一面に柿の紅葉が広がり、10月中旬から11月下旬にかけて各地の果樹園で柿狩りを楽しむことができます。

本州の産地では9月頃から早生品種の出荷が始まるため、福岡でも全国一の生産量を誇る和歌山県産の柿をよく見かけますが、温暖な福岡ではやや遅れて10月中旬ごろから果物売場が柿のオレンジ色で賑わい始めます。

福岡でよく見かける柿の種類

福岡でよく見かける柿を、形や見た目の特徴に注目してご紹介します。
※出回り時期は年や産地の天候で少し前後します。

早生(わせ)品種:9月中旬~10月中旬

西村早生(にしむらわせ)
不完全甘柿。果肉に黒い“ゴマ”模様が入りやすいのが特徴。

早秋(そうしゅう)
完全甘柿。やや四角い扁円形。傷みにくく、比較的日持ちがよいので買い置き向き。

中生(なかて)品種:10月中旬~11月中旬

伊豆(いず)
完全甘柿。早秋の“親”にあたる品種なので形は似ているけど、収穫後はすぐに熟してしまうため早めに食べ切るのが安心。

太秋(たいしゅう)
完全甘柿。大玉で、果面に“条紋”(縦のスジ模様)が出やすい。サクサクとした食感で甘味が強い(糖度16度以上)。

晩生(おくて)品種:11月中旬~12月

富有(ふゆう)
完全甘柿。国内で最も広く作られる代表格。収穫後に温度・湿度を管理して保存した「冷蔵富有」は、冬の12〜2月ごろにも見かけます。

おすすめの柿

1️⃣志波柿

朝倉市のなかでも杷木志波(はき・しわ)地区は富有柿のブランド「志波柿」で知られるエリア。南斜面の畑が多く、日当たりと水はけが良いため、色づきがよく締まりのある果実に育ちます。

地域の直売所でも人気ですが、ふるさと納税の返礼品としても選べるので、時期が合えば取り寄せも便利。「冷蔵富有」も選べます。

【福岡県朝倉市ふるさと納税】志波の富有柿
【福岡県朝倉市ふるさと納税】志波の「冷蔵富有」

👇️ふるさと納税にはこちらのサイトもおすすめです

わたしはふるさと納税を「全国の食材を知る入口」として楽しんでおり、気に入った食材に出会えたらオンラインショップでリピートします。農家さんと直接つながれるサイト「ポケットマルシェ」では、志波で富有・冷蔵富有を扱う柿農家さんが出品されてますので、「福岡 志波柿」で検索してみてください。
※在庫・受付期間は天候や収穫状況で前後します。見つけたらお早めに。

👉 生産者さんから直接お取り寄せ!ポケットマルシェのサイトはこちら

2️⃣秋王(あきおう)

秋王は富有と太秋を掛け合わせて生まれた福岡ブランドの完全甘柿です。
開発に約10年を要し、2012年に品種登録。生産は福岡県内に限定されています。とても甘くてジューシーなのに、食感はサクサク!しかもほとんど種が入らないので扱いやすいのも魅力です。
いちごの「あまおう」、いちじくの「とよみつひめ」に続く福岡の”知る人ぞ知る”果物として、贈答品用にもピッタリです。

👇️こちらのサイトでは化粧箱入りで販売しています。

【まるかじり九州】贈答用 秋王

柿の雑学

種無し柿

種なし柿の成り立ちは、大きく分けて2通りあります。

1️⃣9倍体品種(奇数倍数体)

染色体数が9倍体(奇数)のため種子がうまく育たず、自然に”ほぼ種なし”になるタイプ。代表的なものに「平核無(ひらたねなし)」や「刀根早生(とねわせ)」などがあります。

2️⃣単為結果性

受粉しなくても結実するタイプ。「いちじく」の記事にも出てきた言葉ですね。代表的なものに「太豊(たいほう)」などがあります。
※品種や年によって“単為結果の強さ”は少し変わります。

甘柿と渋柿

柿には甘柿と渋柿があります。
柿の渋みはポリフェノールの一種であるタンニンによるもの。渋柿は水に溶けやすい水溶性タンニンが多く、口に入れた瞬間に唾液と反応して渋みを強く感じます。一方、甘柿にもタンニンは含まれますが、成熟とともにタンニンが“不溶性”へ変化して水に溶けにくくなり、渋みを感じなくなります。
甘柿と渋柿は、さらに4タイプに分けられます。

Hand-drawn diagram showing the four persimmon types by astringency (PCNA/PVNA/PVA/PCA), with a central title and notes for each type plus small fruit icons.
A hand-drawn summary of the four categories—PCNA, PVNA, PVA, and PCA—matching the explanations in the article.

1️⃣ 完全甘柿(PCNA)
成熟果肉のタンニンが不溶性。
代表品種:伊豆、太秋、富有

2️⃣ 不完全甘柿(PVNA)
基本は渋いのですが、種子のまわりで生じるアセトアルデヒド(揮発性成分)の作用により、部分的にタンニンが不溶化します。黒い“ゴマ”模様は不溶化したタンニンの痕。
代表品種:西村早生

3️⃣ 完全渋柿(PCA)
成熟しても水溶性タンニンが残るタイプ。”渋抜き”可能ですが、品種や個体によって”抜けにくさ”に差があります。
代表品種:愛宕(あたご)、西条(さいじょう)

4️⃣ 不完全渋柿(PVA)
受粉条件などで渋の残り方が変わるタイプ。収穫後は”渋抜き”して流通します。
代表品種:平核無、刀根早生

渋抜きとは…
アルコールを噴霧して密閉する、または高濃度CO₂環境に置くことで果実が低酸素(嫌気)状態になり、アセトアルデヒドが発生してタンニンが不溶化します。ざっくり言うと、密閉して息苦しい環境=軽いストレスを与えることでアセトアルデヒドの発生を誘導するイメージ。
家庭では焼酎にサッと浸して密閉する方法がよく用いられます。

干し柿

わざわざ”渋抜き”しなくても、熟しきれば水溶性タンニンが不溶性に変わり、渋みは感じにくくなります。ただし、柿は水分が多い果物。渋みが抜ける頃には果肉がグズグズにやわらかくなってしまいます。そこで、古来から「干し柿にする」という方法がとられてきました。

干し柿にするとグズグズにならないのは、乾燥で水分がぐっと減り、組織が締まるためです。さらに、皮をむいて干すことで表面が乾いて薄い皮膜ができ、先ほど触れた”低酸素(嫌気)状態”になってアセトアルデヒドが発生し、タンニンが不溶化します。この脱水+不溶化が同時に進むことで、崩れず、甘さが際立つ干し柿になるのです。

福岡でも、気温が低く風が通る山側では家庭で干し柿を作るご家庭もありますが、市街地は冬も比較的温暖で湿度も高め。くもりや雨の日が続くとカビが出やすく、街なかで“軒先にずらり”の光景はあまり見かけません。

Rows of persimmons hanging to dry on wooden racks, glowing orange in the autumn sun.
Peeled persimmons form a thin dry film as they hang; low-oxygen conditions insolubilize tannins while moisture leaves, concentrating sweetness.

柿の葉

生薬としての柿の利用(柿蒂、柿霜)

柿の原産地は中国の長江流域とされています。

その歴史は古く、1~2世紀ごろにまとめられた薬学書『神農本草経』にも記載が見られ、すでに薬用としても利用されていたことがうかがえます。ただし生薬として定着しているのは以下のふたつ。意外にも柿の葉は民間療法や健康食品寄りの位置づけが中心です。

柿蒂(してい)
柿のヘタ。気をめぐらせる行気薬に分類されます。胃の気が逆行するとしゃっくりなどの症状が現れますが、柿蒂には気を降ろす作用があるため、しゃっくりを鎮める効果があるとされます。

柿霜(しそう)
干し柿の表面に浮き出る白い糖分(主にグルコース)。熱を冷まし肺を潤す作用があるとされ、咳止めや喉の痛みなどのケアに用いられてきました。

民間療法としての柿の利用(柿の葉)

柿の葉は古くから暮らしのなかで幅広く使われてきました。

Ripe persimmons in a wicker basket with autumn-colored persimmon leaves on a white background.
Persimmon leaves have been used for tea and simple external extracts; together with the fruit, they bring a warm autumn palette.

柿の葉茶
乾燥させた柿の葉には、ビタミンC やポリフェノール(タンニン)、ミネラル(カルシウム・カリウムなど)などが豊富に含まれるとされます。抗酸化作用による健康効果(アンチエイジングや血液サラサラ)が期待でき、しかもノンカフェインなので時間を選ばず楽しめるのもうれしいポイントです。
※タンニンを含むため、食後すぐの鉄剤や鉄分サプリとの併用は時間をずらすのが無難とされます。

柿の葉エキス(外用)
柿の葉をホワイトリカーに漬けて成分を抽出したものは、薄めて化粧水にしたり、吹き出物や虫刺されのケアに用いられてきました。「タンニンの収斂(=引き締め)作用で毛穴をキュッと整える」「抗菌・抗炎作用がある」とされています。
※皮膚を刺激する可能性があるため必ず希釈し、使用前にパッチテストを行ってください。また作ったエキスは清潔な容器で冷暗所保管し、短期間で使い切るのが無難です。

入浴剤
乾燥させた柿の葉は入浴剤としても使用されます。抗菌・抗炎作用により肌荒れや背中ニキビ、タンニンが汗腺を引き締めるため汗のニオケアに役立つとされます。
※追い焚き配管や浴槽素材に影響しない範囲で。色移り注意。

柿の葉寿司
葉に含まれる抗菌・防臭作用が保存に役立つとされ、関西~奈良・和歌山方面の郷土食として受け継がれています。酢飯・塩加減・包み方の総合効果で日持ちを高める知恵ですね。

柿の薬膳効能

An illustration summarizing the medicinal properties of “Autumn Dietary Therapy: Kaki” showing a kaki image along with its nature, flavor, meridian tropism, and functions.
An illustration summarizing the herbal properties of kaki. Part of the autumn therapy series, it clearly shows the nature, flavor, meridians, and main functions at a glance.
An illustration summarizing the medicinal properties of “Autumn Dietary Therapy: Hoshigaki” showing a hoshigaki image along with its nature, flavor, meridian tropism, and functions.
An illustration summarizing the herbal properties of hoshigaki. Part of the autumn therapy series, it clearly shows the nature, flavor, meridians, and main functions at a glance.

柿には「熱を冷まし、肺を潤す」作用があるとされています。

中医学で詳しく解説すると…

柿は「熱を冷ます食材」の代表格。
潤いを補う作用もあるため、発熱時や喉の渇きに良いとされます。

また、過度の飲酒や油っこい・辛い・味の濃い食事が続くと胃腸に熱がこもりやすくなります。その結果、口内炎や粘稠便(拭いてもスッキリしない、便器にこびりつくような便)などの症状が現れやすくなり、時には熱が血管を損傷して出血を招くこともあるとされているのですが、柿は胃腸にこもった熱を冷まし、こうした症状を落ち着かせる作用があると考えられています。

さらに、柿には「酒毒を解す」=二日酔いの軽減に役立つ作用もあるとされます。喉の渇きをいやし、胃熱を冷ますので、私はよく日本酒のつまみにしています。料理に使用するより、そのまま食べるほうが好みです。一方で飲酒時に食べるのは良くないとする説もあるため、体質や体調に合わせて取り入れてください。

栄養学の観点では、粘膜を守るビタミンA(βカロテン)と、免疫機能の維持・強化に役立つとされるビタミンCが豊富。空気が乾燥するこれからの季節、風邪予防に良いですね。1個で1日に必要なビタミンCを満たせるといわれています。

またビタミンA・Cやタンニン、カロテノイド(βクリプトキサンチン)の抗酸化作用により、美容やアンチエイジング、血管の健康維持、生活習慣病予防などの効果も期待できます。

一方で、タンニンの収れんは鉄の吸収を妨げる可能性も指摘されています。貧血気味の方は、鉄剤・鉄サプリとの時間をずらすと安心です。また空腹時の大量摂取や胃の働きが落ちているときは柿胃石のリスクもあるため、量とタイミングは体質や体調に合わせての調整が必要です。

ぬん
ぬん

干し柿にすると身体を冷やさず食べることができ、水分が抜けることでβカロテンや食物繊維、カリウムなどが濃縮して増加します(逆にビタミンCは大きく減少)。「熱・喉の渇き・二日酔い」には生、「アンチエイジング・生活習慣病予防・整腸」には干し柿と、用途や目的に合わせて食べ分けるのも良さそうです。

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