このブログでは、季節に応じた薬膳食材をご紹介しています。
2025年12月22日(冬至)〜2月4日(立春)の期間を『冬の薬膳』としてご案内しています。
昨今のホタテ輸出問題と、ホタテ産業が抱える課題
昨今のホタテ輸出問題
ここ数年、ホタテをめぐるニュースを目にする機会が増えました。
きっかけとなったのは、2023年8月に始まった福島第一原発のALPS処理水の海洋放出です。これを受けて中国は日本産水産物の輸入を停止し、日本の水産業、とくにホタテ産地には大きな影響が出ました。

先月(11月)には輸入再開の動きが出たものの、手続きはふたたび止まりました。中国側は「技術資料(検査手続き等)の不足」などを理由に挙げていますが、報道では日中関係の緊張が背景にあるとも伝えられています。
この一連の問題は、日本のホタテ輸出が中国に強く依存してきた構造を改めて浮き彫りにしました。北海道産ホタテを中心に、輸入停止が起きると在庫が行き場を失い価格が急落するなど、影響は一気に表面化します。
ただし今回は、2011年の震災後や2023年当初と比べると少し様子が違いました。
ふるさと納税を含む国内消費の後押しに加え、米国や台湾、東南アジアなど、中国以外の国への輸出が急速に広がりました。なかでも台湾は、日本産ホタテの重要な輸入先として、支援的な姿勢を示しています。
その結果、ホタテ市場は大きく揺れながらも、前回ほどの深刻な価格崩壊は避けられています。とはいえ、中国市場の存在感が依然として大きいことに変わりはなく、ホタテ産業は今も転換期のただ中にあると言えそうです。
中国のホタテ需要
中国は、現在も日本産ホタテにとって重要な市場のひとつです。
近年は対中依存を減らす動きが進んでいるものの、中国は世界最大級のホタテ生産・消費国であり、その需要規模は依然として大きな存在感を持っています。中国で流通するホタテの多くは中国内での養殖品ですが、日本産はその品質の高さから高級食材として扱われてきました。

中国でホタテが根付いた背景には、「生の貝を食べる文化」よりも、「干し貝柱を使う文化」があります。
中国では古くから、大型二枚貝の貝柱を「江珧柱(こうようちゅう)」と総称し、珍重してきました。干し貝柱(乾貝)は旨味と栄養が凝縮されており、繊維が密で、戻すとやわらかさが戻ります。長期保存や長距離流通に向いていたこともあり、海から遠い内陸部の人々にとって非常に価値の高い食材でした。
また干し貝柱は単なる保存食にとどまらず、皇帝への献上品や貴族の贈答品、近年では春節や中秋といった年中行事の縁起料理としても用いられ、中国の食文化に欠かせない存在として定着していきました。
日本のホタテが人気な理由
中国でとくにホタテの貝柱が人気になったのは、他の大型二枚貝と比べて筋肉質で水分が少なく、乾燥後も旨味が凝縮されやすい構造が決め手のひとつとなっています。
ホタテは貝柱が発達しており、天敵であるヒトデに襲われたときなど、貝柱で貝殻を力強く開閉させ、すばやく移動することができます。昔は、その姿がまるで帆を立てて進む船のように見えたことから、「帆立」という名前が付けられたとも言われています。

とくに日本産ホタテは、品質の高さで世界的に評価されています。
ホタテは冷水を好むため、北海道や東北地方などの寒冷海域で育つホタテは旨みが濃厚となり、貝柱の繊維もより緻密になります。さらに、日本独自の冷凍・パック技術によって高い鮮度が保たれたまま輸出されるため、海外ではプレミアム品として扱われています。
ホタテ産業が抱える課題
日本で流通しているホタテのほとんどは養殖によるものですが、その多くは海中に吊るした貝が自然環境の中で育つ「垂下」などのスタイルです。人工飼料は使わず、海の流れに含まれる天然のプランクトンを食べて成長するため、風味や甘みは天然ものとほとんど変わりません。

ただし、海の環境そのものが“育ち方”を左右するため、気候変動の影響を受けやすいのも特徴です。近年では海水温の上昇やプランクトンの減少を背景に不漁が発生し、供給の不安定化や価格の高騰が問題になっています。
中国への依存を減らし、輸出先を分散させたことで全体の輸出量は回復基調にありますが、生産地や加工業者にとっては依然として厳しい状況が続いています。
そこで水産庁が後押ししているのがマーケットイン型の生産体制。これは、従来の「作ってから売る」プロダクトアウト型に対し、市場調査や取引先の要望(サイズ・量・品質・納期など)をあらかじめ把握し、そのニーズに合わせて計画的に漁獲・養殖・加工を行う考え方です。
変化する海の環境と市場の動きを両立させるために、ホタテ産業はいま次の時代に向けた”新しい生産のあり方”を模索しています。
おすすめのホタテとレシピ
ふるさと納税は、こうした“マーケットイン型”の考え方と相性が良い面があります。というのも、ふるさと納税は結果として“需要のあるところに商品が流れる”仕組みになりやすく、生産者側は出荷の見通しを立てやすくなるためです。
実際、2023年に中国が日本産水産物の輸入を停止した際には、このふるさと納税制度がホタテ産地の支えのひとつになったと言われています。
私自身もこのタイミングで、初めて北海道・別海町のホタテ貝柱を返礼品に選んで寄付しました。寄付金の用途は「酪農・水産等の振興・地場産品開発」を選択しています。
1️⃣【ふるさと納税】北海道・別海町 大玉ホタテ
先に述べたようにホタテの流通は不安定なので、返礼品の内容は時期によって異なりますが、選ぶなら断然!大玉サイズ(いちばん大きなサイズ)がおすすめです。

Thick, sweet, and versatile, they are enjoyable both raw and cooked, offering exceptional quality and satisfaction.
私は偏食でホタテを食べられないのですが(笑)、魚介の味にうるさい同居人が「大きさも旨みの濃さも別格」と絶賛しており、食べるたびに「来年も別海町に寄付してほしい!」と懇願されています。
8月に価格が改定があり少しお値段は上がったのですが、実質2,000円の負担でこのクラスのホタテが食べられるのであれば、めちゃくちゃお得だと感じています。来年も別海町に寄付して、少しでもホタテ生産のお役に立てればと思っています。
👇️ふるさと納税にはこちらのサイトもおすすめです

1️⃣を使用したレシピ:中華風カルパッチョ
フライやバター焼きなどいろいろ提案しても、同居人のリクエストは「お刺身かカルパッチョ」一択。別海町のホタテは、生のぷりぷり食感を味わうのがいちばんだそうです。
ホタテは解凍に失敗すると臭みが出るので、生食するときは塩を入れた氷水で一晩かけて解凍します。時間や冷蔵庫の空きがなく、常温または冷蔵庫で自然解凍した場合は、軽く湯引きします。

ホタテの湯引き
①貝柱を半分の厚さに切り、熱湯に10秒浸けます。
②氷水で冷やします。
湯引きすると臭みが消えるだけでなく甘味も引き立ちます。お皿に盛り付けて軽く塩を振り、熱したごま油をジュッとまわしかけた中華風カルパッチョは同居人の大好物。サラダ仕立てにすると華やかになるので、お正月に作る予定です。
2️⃣【北海道産ホタテ】干し貝柱
干し貝柱も、わが家では常にストックしている食材です(これなら私も食べられます)。
次の「薬膳効能」で詳しく解説しますが、ホタテの干し貝柱は、薬膳では“エイジングケアのための天然のサプリメント”のような存在。正直お値段は張りますが、わが家では500gあれば一年は持ちます。私も同居人もアラフィフ世代。これから先も元気に働き続けるために、欠かすことのできない食材になっています。
アンガシオンのミキサーで細かく砕き、即席の中華だしとして使うこともありますが、やはりゆっくり戻したほうが美味しい出汁が取れます。そのため真空包装機で密閉し、前日から冷蔵庫で戻して使うことが多いです。

2️⃣を使用したレシピ:中華風肉だんごと白菜のスープ
年末まで忙しく働く同居人のために、高山なおみさんのレシピを自己流にアレンジした「中華風肉だんごと白菜のスープ」を作りました。肉だんごを一度油で揚げ焼きしてから煮込むという手の込んだレシピですが、油を吸ってとろとろになった白菜を味わうためには絶対に省けない工程。この白菜があまりに美味しいことから、高山なおみさんの当時のご主人は「トロ白菜」と名付けたほどです。
我流では、豚肉の代わりに鶏むね肉を使用。疲労回復の薬膳ですが、くたくたに疲れたときでも食べやすく、消化にやさしいレシピにアレンジしています。

中華風肉だんごと白菜のスープ
①前日から干し貝柱と干し椎茸をそれぞれ各水1カップ(200cc)で戻しておきます。
②鶏むねひき肉300gに戻した干し貝柱、長ネギと生姜のみじん切り、片栗粉大さじ1を加え、粘りがでるまでよく混ぜます。
③ひとくち大にまるめ、少量の油で揚げ焼きします(中まで火が通ってなくてOK)。
④白菜1/4玉と干し椎茸を食べやすい大きさに切り、鍋に入れます。酒1/4カップ、①の戻し汁、くばらあごだしつゆ大さじ4を加え、③の肉だんごをのせて煮込みます。
薬膳ではお粥やスープなど、コトコトと煮込むことによって薬効も引き出しやすくなると考えます。貝柱に含まれる旨味成分はアミノ酸の「グリシン」や「アラニン」で、グリシンには睡眠の質を高める効果や、皮膚の潤いを保つ効果も期待できます。ホタテには不眠やイライラを改善するカルシウムも含まれるため、心をリラックスさせ安眠を促す薬膳にもよく使われます。
ホタテの薬膳効能

ホタテ(貝柱)には「身体を潤し、滋養強壮・老化予防する」作用があるとされています。
中国最古の医学書『黄帝内経』に「鹹入腎」と記されているように、中医学では古くから「海のもの」は『鹹味(海に由来する塩からい味)』をもち、『腎』と関わる食材として捉えられてきました。
この考え方は、漢代の『神農本草経』や明代の『本草綱目』によって整理・発展し、やがて「鹹味をもつ貝類には、腎の働きに作用する力がある」と解釈されるようになりました。
ホタテを含む貝類がもつ代表的な作用は、以下の二つです。
1️⃣『腎陰』を補う(潤す・滋養する)
こちらの記事で触れたように、『腎陰』には身体を潤し、すみずみまで栄養を行き渡らせる働きがあるとされます。不足すると皮膚や髪の潤いが失われてシワや白髪が目立ちやすくなり、筋肉や関節の潤滑が悪くなって痛みやこわばりを感じるようになると考えられています。
また、不足するとのぼせや手足のほてり、寝汗、口の渇きといった『陰虚』の症状が現れやすくなるのも特徴です。
『腎』は生命活動の土台を支える重要な臓腑であり、『腎』を養うことは基礎体力の維持や滋養強壮にもつながります。さらに『腎陰』は加齢とともに不足しやすくなるため、『腎』を養うことはエイジングケアの基礎ともいえるでしょう。
2️⃣水のめぐりを整える(利水・むくみ対策)
こちらの記事で触れたように、『腎』は『津液(しんえき=体内の水分の総称)』の貯水槽としての役割を担い、再利用や排泄を通して体内の水分量を調整する働きがあると考えられています。そのため、『腎』が弱ると水分バランスが乱れ、むくみや重だるさを感じやすくなるとされます。
ホタテを含む貝類には、水分代謝を促し、体内の余分な水分の排出を助ける働きがあるとされています。

貝類のなかでも、栄養と旨みが凝縮されたホタテの干し貝柱は「少量でも効率よく滋養を補える」「湯やスープに戻すことで、身体に負担をかけず栄養を摂取できる」といった特徴があり、薬膳ではスープやお粥の素材として古くから重宝されてきました。
栄養学の観点から見ても、ホタテの貝柱は「高タンパク・低脂肪」の優れた食材です。疲労回復や代謝に関わる栄養素が凝縮されており、まるで「天然のサプリメント」のような存在です。
栄養ドリンクの主成分として知られるタウリンを豊富に含み、胆汁分泌の促進など、肝機能をサポートする働きがあります。肝臓が元気に働くことでエネルギー代謝がスムーズになり、結果的に「疲れが取れやすい」状態を作ってくれます。
さらに、細胞分裂や新陳代謝に関わる亜鉛や、血液の生成に重要な鉄分・ビタミンB12・葉酸も含まれており、疲労回復や体調管理、美容を意識する人にとって、心強い食材と言えるでしょう。
おすすめの薬膳書籍
薬膳の効能は、書籍によって記載内容が異なることがよくあります。これは薬膳が、数千年にわたる人々の実践と経験の積み重ねで発展してきた学問だからこそ。そんなとき頼りになるのが『先人に学ぶ 食品群別・効能別 どちらからも引ける 性味表大事典 改訂増補版』。
複数の古典書をもとに、1184種類の食材が掲載されており、薬膳を実践するならぜひ手元に置いておきたい一冊です。

先人に学ぶ 食品群別・効能別 どちらからも引ける 性味表大事典 改訂増補版



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