このブログでは、季節に応じた薬膳食材をご紹介しています。
2025年9月23日(秋分)〜11月7日(立冬)の期間を『秋の薬膳』としてご案内しています。
かぼちゃの雑学
ホクホクかぼちゃを選ぶのは難しい
かぼちゃにはゴツゴツした皮が特徴の日本かぼちゃ(C. moschata)と、つるんとした皮の西洋かぼちゃ(C. maxima)があります。
水分が多く粘質で甘さ控えめな日本かぼちゃに対し、西洋かぼちゃは栗のようにホクホクして甘みが強く、「栗かぼちゃ」とも呼ばれています。近年では西洋かぼちゃの人気に押され、日本かぼちゃの出荷量は全体の約1割程度にまで減っているそうです。

たまに「ホクホクを期待して西洋かぼちゃを買ったのに、なんだかベチャッとしていた」ということがありますが、これは品種や追熟(熟成)の期間、保存状態の違いによるものです。
かぼちゃは種をまいてから花が咲くまで約1か月。そこから収穫までは、日本かぼちゃでおよそ25〜40日、西洋かぼちゃでは40〜50日ほどかかります。収穫直後のかぼちゃはまだ水分が多く、甘みが十分に乗っていません。そのため2〜3ヵ月ほど貯蔵して追熟させてから出荷されるのですが、この追熟期間が長すぎても短すぎても水っぽくなる原因になります。
完熟のサインは「ヘタの切り口」。ここがしっかり乾いてコルクのようになっているものは、よく熟しています。また、皮の近くまで濃くオレンジ色が広がっていることや、種がふっくら密集していることも良品の目安。
ただし、スーパーでよく見かけるカットかぼちゃは、すでに鮮度が落ちていることもあり、ホクホクの見極めは難しいところです。最終的には「調理してみるまで分からない」という、ちょっとした博打要素もありますね。

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かぼちゃの原産地と種類
かぼちゃは夏に収穫され、秋から冬にかけて店頭に並びます。福岡では12月頃までが国産かぼちゃの旬。それ以降に出回るのは、主にニュージーランドかメキシコからの輸入品です。
🎃日本かぼちゃ
日本かぼちゃの原産地は、メキシコからグアテマラにかけての中南米地域とされています。およそ7000〜9000年前の遺跡から種子が発見されており、古代から栽培されてきた歴史の長い作物です。
16世紀にポルトガル人がカンボジアを経由して日本に持ち込み、豊前国(現在の大分県)の大名・大友宗麟に献上したと伝えられています。このときの「カンボジア瓜」という呼び名がなまって「カボチャ」になったとされ、現在でも大分県では伝統野菜「宗麟かぼちゃ」としてその系統が受け継がれています。
🎃西洋かぼちゃ
西洋かぼちゃの原産地は南米アンデス山脈周辺。約5000〜4000年前の遺跡から種子が発見されています。日本には19世紀中頃にアメリカから伝わりました。
🎃ペポかぼちゃ
日本・西洋とは別に、ペポかぼちゃ(Cucurbita pepo)という種類もあります。北アメリカ南部(テキサス州やカリフォルニア州付近)が起源とされ、日本には明治時代に導入されました。
ペポかぼちゃは淡泊で、シャキシャキした食感が特徴。日本ではハロウィンのジャックオーランタンや観賞用のミニカボチャとして見かけることが多いかもしれません。ちなみにズッキーニや金糸瓜(そうめんカボチャ)もこのグループに分類されます。
🎃バターナッツかぼちゃ
最近人気のバターナッツかぼちゃは、1940年代にアメリカ合衆国のマサチューセッツ州で「グースネック・スクワッシュ」と「ハバード・スクワッシュ」を交配して誕生した品種です。植物分類上は日本かぼちゃの仲間に該当し、ねっとりとした食感とバターのようなコク、ナッツを思わせる風味が特徴です。

かぼちゃレシピ
レシピ①かぼちゃのぽくぽく煮
水分の多いかぼちゃに当たってしまったときは、高山なおみさんのレシピで煮物を作ります。その名も「かぼちゃのぽくぽく煮」。水を一滴も加えず、かぼちゃ自体の水分だけで煮るというシンプルな一品です。詳しい分量などは【高山なおみさんの のんびり作る おいしい料理】(※現在は販売されておらず、中古でのみ入手可能)に掲載されています。
高山さんはこれにマヨネーズをつけて食べるのが定番だそう。試してみると意外なほど相性が良く、私もそれ以来かならずマヨネーズを添えるようになりました。和食なのに洋食っぽさが出て、ハイボールや白ワインによく合います。

レシピ②かぼちゃの揚げ焼き
かぼちゃは代表的な緑黄色野菜で、β-カロテン(体内でビタミンAに変わる)がとても豊富です。ビタミンAは脂溶性なので、油やバターと一緒に摂ると吸収率が高まります。私はかぼちゃの天ぷらが大好きなのですが、家で天ぷらをするのは少し面倒。手軽にできる”揚げ焼き”にしています。

①かぼちゃは1cmほどの厚さに切ります。
②薄力粉に水を加えて衣を作ります。
※あっさり・薄付きが美味しいので、衣は通常のてんぷらよりサラサラに。
③フライパンに油を大さじ3入れて中火で熱し、かぼちゃを並べます。
④弱火にして蓋をし、3分。ひっくり返して蓋をし、2分。
もう一度ひっくり返し、最後は蓋を外して中火で1分。このとき油はねに注意してください。
⑤仕上げに「セロリ」でご紹介した「肉のふくしま」さんの「極上スパイス 喜(よろこび)」をパラパラっと振れば完成です。
レシピ③かぼちゃの薬膳おやつ
身体を温めるかぼちゃとシナモン、潤いを与えるナッツやドライフルーツを組み合わせた、秋冬の乾燥対策にぴったりのおやつです。レンジで加熱してオーブントースターで焦げ目をつけても良いのですが、フライパンひとつで作るほうが手軽です。

①かぼちゃは揚げ焼きよりも少し薄め(5〜7mmくらい)に切ります。
②フライパンを熱してバター20gを溶かし、かぼちゃを並べます。
③弱火にして蓋をし、2分。ひっくり返して蓋をし、中火で2分(焦げ目をつける)。さらにひっくり返してシナモン、ナッツ、ドライフルーツなどを散らし、最後は蓋を外して強火で1分(焦げ目をつける)。
④メープルシロップをジューッとまわしかけ、フライパンを揺すって全体に絡めたら完成です。
かぼちゃの種
効能と栄養素
生薬ではかぼちゃの種を「南瓜子(なんかし)」と呼び、駆虫薬(虫下し。体内の寄生虫を排出するために用いられる薬の一種)として古くから用いられてきました。
薬膳では『湿(体内の余分な水分)』を尿として排出する『利水』作用があるとされ、むくみの解消を目的にスープやおかゆのトッピングなどに使われます。
栄養学的には、良質なたんぱく質と不飽和脂肪酸(とくにリノール酸)を含み、さらに亜鉛・マグネシウム・カリウムなどのミネラルも豊富。またビタミンEやポリフェノールといった抗酸化成分も多く、アンチエイジングにも役立つとされています。

種類と食べ方
かぼちゃの種には「生」と「ロースト(炒り)」の2タイプがあります。
生のままでも食べられますが、少し消化しにくく傷みやすいのが難点。浸水してから食べると酵素が活性化して吸収が良くなるとも言われていますが、私は手軽に食べられるロースト派です。
中国(とくに南西部の雲南省や貴州省)では殻ごとローストした「白瓜仁子」をよく食べるそうですが、日本の市販品は白い外皮をむいた中の緑色の部分(仁/ペピタ)のみをローストしたものが主流です。
【ナッツとドライフルーツの専門店・小島家】かぼちゃの種
購入するなら「無塩・無油」の素焼きタイプがおすすめ。
私が今食べているのは、東京出張のときにアメ横の「小島屋」さんで購入したもの。中国南西部で育てられた種を厳しく選別し、国内の工場で検品・洗浄したものを、なんと機械ではなく職人さんの手作業で焙煎しているそうです。香ばしくてコクがあり、いくらでも食べられそう。
私は『湿』を溜めやすい体質なので、利水作用のあるかぼちゃの種はまさにぴったり。なくなり次第リピートしようと思っていますが、一日の適量は20粒程度とされるため、まだしばらくは楽しめそうです。たったそれだけで不足しがちな亜鉛などの栄養素を補えるのですから、まさにスーパーフードですね。
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かぼちゃの薬膳効能

かぼちゃには「気を補い、身体を温める」作用があるとされています。
かぼちゃは消化をつかさどる『脾胃』の働きを高め、『気』を補って疲労を回復する作用があるとされています。冷えたお腹を内側から温める力もあり、冷え性や秋冬の冷え疲れにもよいとされています。
日本では夏に収穫したかぼちゃを保存し、寒さの厳しい冬至に食べて冬を越すという古くからの習わしがあります。人々は無意識のうちに、かぼちゃが持つ薬膳効能を感じ取っていたのかもしれません。
栄養学的には、βカロテンを豊富に含む代表的な緑黄色野菜です。
βカロテンは体内でビタミンAに変わり、免疫力を高めて皮膚や粘膜の健康を保つ働きがあります。さらにビタミンCやEも多く、これらの抗酸化作用によって健康維持だけでなく美容にも良いとされています。
帰経は『脾胃』ですが肺を潤す作用もあり、鼻やのどに潤いを与えて乾燥から身を守るため、風邪予防にも効果的。
ただしかぼちゃは潤す力が強いため、『湿(体内の余分な水分』を溜め込みやすい体質の方にはやや不向きとされます。むくみや水太りなどの症状が気になるときは控えめにし、砂糖や油を使わない調理方法でいただくのがおすすめです。
おすすめの薬膳書籍
薬膳の効能は、書籍によって記載内容が異なることがよくあります。これは薬膳が、数千年にわたる人々の実践と経験の積み重ねで発展してきた学問だからこそ。そんなとき頼りになるのが『先人に学ぶ 食品群別・効能別 どちらからも引ける 性味表大事典 改訂増補版』。
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