このブログでは、季節に応じた薬膳食材をご紹介しています。
2025年6月11日(入梅)〜7月15日(山笠の追い山)の期間を『梅雨の薬膳』としてご案内しています。
イワシの旬と産地
イワシの旬については諸説ありますが、ラズウェル細木さん著「食のほそ道(11巻)」によると、梅雨どきのイワシは「入梅いわし」と呼ばれ、脂がのって美味しいと言われているそうです。
具体的には6月〜7月の入梅時期に水揚げされるマイワシのことを指し、この時期のマイワシは産卵を終えて脂がのるため、一年の中でもとびきり美味しいとされています。
マイワシの産卵は春がピークで、暖かい地域では12月頃から始まり、寒い地域でも6月には終わるとされています。漁獲時期は地域によって大きく異なるため一概には言えませんが、一般的には夏が旬とされることが多いです。
マイワシは沖縄を除く日本全国の沿岸に広く生息しており、とくに太平洋沿岸での水揚げ量が多く、千葉県の銚子漁港や茨城県の大洗漁港が有名です。
一方、日本海側に位置する福岡では流通がそれほど多くない印象で、昨日も市内のスーパーを3軒ほど回ってようやく1軒、長崎県産のマイワシを見かけました。 今の時期の福岡で「美味しい魚介」といえば、やはり「鯛」「アジ」「イサキ」「水イカ」「ケンサキイカ」あたりが思い浮かびます。

【おすすめの鮮魚店】とと市場
マイワシを見かけたのは、ららぽーと福岡1階にある、西鉄が運営するスーパー「レガネット」内の鮮魚コーナー「とと市場」さん。新鮮な魚介類や海産物はもちろん、お寿司や刺身の盛り合わせ、焼き魚やエビフライなどの調理済みお惣菜も充実しています。どれも鮮度と味の良さに定評があり、地元の人からも人気のコーナーです。
スタッフの方々もとても親切。調理方法を相談するとアドバイスをいただけますし、下処理した状態で渡してくださるのもありがたいポイントです。
とと市場を運営しているのは、福岡県北九州市に本社を置く株式会社最上鮮魚。地元福岡を中心に九州・中国地方のスーパーや商業施設で鮮魚コーナーを多数展開しています。
店舗情報
住所 福岡市博多区那珂6-23-1 ららぽーと福岡1階「レガネット」内(西鉄バス「那珂5丁目(ららぽーと福岡前)」から徒歩2分)
電話 (鮮魚部)092-558-1627(惣菜部)092-558-1636
定休日 施設に準ずる
営業時間 10:00〜21:00
2025年8月16日(土曜)15時より、マグロの解体ショーが行われるそうです
※変更となる場合がございますので、ご来店前に店舗情報をご確認ください。
イワシのぬか炊きと、“いつか行ってみたいリスト”
福岡県のなかでも、北九州エリアでは、イワシを米ぬかと調味料でじっくり煮込んだ「イワシのぬか炊き」という郷土料理があり、日常的によく食べられている印象があります。青魚特有の臭みをぬかがやわらげ、骨までやわらかく煮込まれているのが特徴で、ご飯が進むおかずとして親しまれています。
鰯のぬか炊きの歴史については、明確な起源や発祥時期を示す文献は残っていませんが、江戸時代初期に豊前国(現在の北九州市小倉)を中心に発展したとされる郷土料理です。魚をぬかで煮る料理は全国的にも珍しく、まさに北九州独自の食文化といえますね。
…とはいえ実は私、青魚があまり得意ではなく、イワシも進んで食べるタイプではありません。
でも、骨までやわらかく煮込まれたやさしい味のぬか炊きなら…もしかしたら好きになれるかもしれません。そんな期待を込めて、“いつか行ってみたいリスト”に入れている、福岡市内でぬか炊きが食べられるお店をご紹介します。
福魚食堂
屋台で有名な福岡市・長浜には、”福岡の魚の台所”として親しまれる「長浜鮮魚市場市場会館」があります。ここでは福岡の食文化と、新鮮な海の幸を気軽に楽しめるスポットとして、地元の人はもちろん観光客にも人気です。
会館1階には鮮度抜群の魚介を使った食堂街が並び、朝から活気にあふれています。
福魚食堂は、元仲買人の大将と料理歴40年以上の女将が営む人気店。店主自ら目利きした新鮮な魚介を、リーズナブルな価格でたっぷり味わえるのが魅力です。カウンター席とテーブル席があり、おひとりさまでもグループでも気軽に立ち寄れます。
【イワシのぬか床炊き定食】900円
店舗情報(2025年7月時点の情報です)
住所 福岡市中央区長浜3-11-3 市場会館1階(地下鉄赤坂駅から徒歩10分)
電話 092-711-6300(予約不可)
定休日 日曜日
営業時間 7:00〜14:00
※変更となる場合がございますので、ご来店前に店舗にご確認ください。
ぬか床 千束(ちづか)
福岡市中央区にある「ぬか床 千束(ちづか)」は、ぬか床のある暮らしを大切にする発酵食品専門のお店です。店主の家系に代々受け継がれてきたぬか床は、なんと200年以上の歴史を誇ります。
料理研究家として活躍された母・福永壽枝さんが、家庭の味とぬか文化を広めたいと活動し、その想いを受け継いだ娘の下田敏子さんが「千束」を立ち上げました。
スローフードや発酵食品への関心が高まる中、千束のぬか床は、長年培われた乳酸菌が今も生き続ける“本物の発酵食品”として注目を集めています。歴史と家族の想いが詰まったぬか床を通して、福岡の食文化と発酵の魅力を発信し続けているお店です。
【ぬかみそ煮定食(魚)】1,500円 ※魚の種類は日によって異なります
店舗情報(2025年7月時点の情報です)
住所 福岡市中央区高砂2-9-5(西鉄バス「高砂2丁目」より徒歩3分)
電話 092-522-6565
定休日 土曜・日曜・祝日
営業時間 10:00〜17:30
※変更となる場合がございますので、ご来店前に店舗にご確認ください。
イワシの加工品
イワシの乾物
イワシは傷みが早いため、漁獲後すぐに加工されることが多く、加工品の種類も豊富です。日本では乾物として使われることが多いですね。
稚魚の状態では、釜揚げしらす(水分含有量約85%)、しらす干し(50〜60%)、ちりめんじゃこ(25〜35%)と、乾燥具合の違いによって呼び名が変わります。
※ちなみに「しらす」はイワシに限らず、イカナゴやニシンなど体に色素がなく白い稚魚の総称です。
カタクチイワシを茹でて乾燥させたものは西日本では「いりこ」、東日本では「煮干し」として親しまれています。
ウルメイワシやマイワシは、塩を振って水分を除いたあと洗って乾燥させ、「丸干し」や「生干し」に。目に竹串や藁を通して干されたものは「めざし」と呼ばれ、昔ながらの保存食として親しまれています。
いりこ
鮮魚としてのイワシは苦手なのですが、加工品は好きでよく購入しています。
先日購入した「いりこ」は食べごたえのある大きめサイズ。調べてみると、カタクチイワシは大きさによって「大羽(おおば)」「中羽(ちゅうば)」「小羽(こば)」「カエリ」「チリメン」の5段階に分けられていて、大羽からカエリまでのサイズが「いりこ」と呼ばれるそうです。
この大きさの違いは、成長段階の違い。大きくなるにつれて出汁の旨味は濃くなりますが、その分骨も硬くなるため食べにくくなります。
私が購入したのは6cm程度ほどの「小羽」に分類されるサイズ。せっかくの食べごたえを活かしたくて、南蛮漬けにしました。
いりこのレシピ

① 人参は細切り、玉ねぎは繊維と垂直に薄切りにします。
② ①と以下の材料を鍋に入れてひと煮立ちさせて浸け汁を作り、保存用容器に移しておきます。
・水:200ml
・お酢、みりん、「名水のたましずく」:各小さじ2
・「くばらあごだしつゆ」:小さじ1
③ 多めの油(大さじ1.5〜2)でいりこを揚げ焼きにします。
※焦げると苦みが出るので、弱中火でサッと熱を通す程度。
④ ②に浸け、2〜3時間なじませます。冷蔵庫で一晩寝かせても◎。

脂肪分が酸化すると嫌な臭いが出てしまうため、余ったいりこは通気性のない袋に入れ、冷凍庫で保存します。
【おすすめの加工品】天の橋立オイルサーディン
イワシといえば、アンチョビやオイルサーディンも定番の加工品ですよね。
とはいえ、もともとイワシがあまり得意ではない私にとって、オイルサーディンは少しハードルが高い存在でした。
でも【竹中罐詰(たけなかかんづめ)】さんのオイルサーディンだけは、ぺろりと美味しくいただけます。
竹中罐詰さんは、京都府宮津市に本社を構える、明治41年創業の老舗缶詰メーカー。看板商品である「天の橋立 オイルサーディン」は、新鮮なイワシを厳選し、熟練の職人がすべて手作業で下処理から缶詰めまでを行うのが特徴です。缶を開けると、一糸乱れぬ美しい並びに目を奪われます。
その丁寧な仕事ぶりは地元でも高く評価されており、宮津の名産品として“宮津遺産”にも認定されています。贈り物や特別な食卓にもぴったりな逸品です。
クセがなく上品な綿実油を使用した「いわし油漬け」や「かたくちいわし油漬け」、香り高いエキストラバージンオリーブオイルで仕上げた「いわしオリーブオイル漬け」などラインナップも豊富。魚の旨味とオイルのまろやかさが絶妙に調和し、そのまま食べるのはもちろん、サラダやパスタ、炊き込みご飯など幅広い料理に活用できます。
私はフライパンでチャッと炒めて、ほんの少しお醬油をかけて食べるのが定番。正直、お皿まで舐めたくなる美味しさです…!
楽天市場やYahoo!ショッピングでは、限定パッケージの取り扱いもあり、ちょっと特別感のある装いが魅力です。賞味期限が長いので、友人へのちょっとした手土産用に、多めにストックしています。
Amazonで購入できるリンクを貼っておきますので、ぜひ一度お試しください!
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イワシの薬膳効能

イワシには「気血を補い、肝腎の機能を高める」作用があるとされています。
イワシの効能は、中医学の観点から見ると非常に多岐にわたります。
なかでも注目すべきは「気血を補い、肝腎の機能を高めること」。これをひとことで表すなら「元気な肉体づくりとアンチエイジング」です。
私が薬膳のクラスに通っていたとき、同じクラスに「虚弱体質を改善したい」という女性がいました。彼女は消化機能をつかさどる『脾胃』が『気虚』の状態で、肉や魚などの「気血を補う食材」を食べてもうまく消化することができず、そのまま便に出てしまうことが多かったのです。
そんな彼女に、先生がすすめたのは「釜揚げしらす」。「ほんの少量ずつで良いから、ごはんに混ぜて、毎日コツコツ食べるように」とのことでした。最初はごくわずかな量しか食べられなかった彼女でしたが、徐々に白身魚やささみも消化できるようになり、最終的には焼き鳥屋さんで修業のお祝いをしたことを今でも覚えています。
イワシは疲れやすい・顔色が悪い・冷えやすいといった虚弱体質の改善に向くとされ、さらに血流を促して体を温める『活血(かっけつ)』の作用もあるため、冷え症や血行不良にも効果的とされています。
また、薬膳では『肝・腎』を補う食材には「子どもの成長」や「老化予防(いわゆるアンチエイジング)」に効果があるものが多くあります。イワシもまさにそのひとつで、筋骨の強化や、目や脳の機能を高めるといった働きがあり、老化予防や認知機能の維持にも役立つとされています。
栄養学の観点から見ると、DHA(ドコサヘキサエン酸)やEPA(エイコサペンタエン酸)といった不飽和脂肪酸が豊富に含まれており、脳の活性化や血液をサラサラに保つ効果が期待できます。さらに、レチノール(ビタミンA)やビタミンEなど、アンチエイジングに有効な成分も豊富です。細胞の再生や成長を促すビタミンB2も含まれており、見た目の美しさにも貢献します。
また、イワシはカルシウムが豊富なうえ、その吸収を促すビタミンDも多く含まれているため、骨粗鬆症の予防やイライラ対策にも効果的。丸ごと食べられる「いりこ」や、骨ごとすり潰して作る「つみれ」など、栄養を余すことなく摂る食べ方がおすすめです。
おすすめの薬膳書籍
薬膳の効能は、書籍によって記載内容が異なることがよくあります。これは薬膳が、数千年にわたる人々の実践と経験の積み重ねで発展してきた学問だからこそ。そんなとき頼りになるのが『先人に学ぶ 食品群別・効能別 どちらからも引ける 性味表大事典 改訂増補版』。
複数の古典書をもとに、1184種類の食材が掲載されており、薬膳を実践するならぜひ手元に置いておきたい一冊です。
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