このブログでは、季節に応じた薬膳食材をご紹介しています。
2026年2月4日(立春)〜3月20日(春分)の期間を『早春の薬膳』として、冬・早春・春におすすめの食材をご案内しています。
北九州市・和布刈神社
わかめの旬は晩冬から春にかけて。
乾燥や塩蔵で保存されたものは一年を通して手に入りますが、生わかめはこの時期だけの楽しみです。
福岡では、北九州・門司区の和布刈(めかり)神社で行われる神事が旬の始まりを告げます。和布刈神社では旧暦の元日(今年は2月17日)の早朝(3時!早朝というよりほとんど真夜中)に神職の方が干潮の海へ入り、わかめを刈り取って神前にお供えする儀式が行われます。

その神事は写真でしか見たことがありませんが、和布刈神社には何度か参拝したことがあります。御祭神は潮の満ち引きを司る月の女神・瀬織津姫(せおりつひめ)さま。海に向かって鳥居が立ち、関門海峡を静かに見守っています。

福岡は希少な天然わかめの産地
わかめの名産地といえば、まず岩手県・宮城県にまたがる三陸海岸が思い浮かびます。国内生産量の半分以上を占める、日本を代表する産地です。徳島県・兵庫県にまたがる鳴門海峡も有名で、こちらは灰をまぶして保存性を高める「灰干しわかめ」でも知られています。

あまり知られていませんが、実は福岡もわかめの名産地。日本で流通しているわかめの多く(9割前後)は養殖で、天然ものは非常に希少なのですが、福岡では各地で天然わかめが収穫されています。手に入るのは2月から4月にかけてのわずかな期間のみ。
以下では、とくに有名な産地をご紹介します。オンラインストアで購入可能なものにはリンクも掲載していますが、まだ発売前の商品も多いため、3月中旬頃に情報を更新予定です。この機会にぜひ希少な天然わかめをお試しください。
🌊筑前海エリアの天然わかめ
玄界灘の荒波にもまれる志賀島や玄海島周辺、潮の流れが複雑に交わる地島(じのしま)周辺は、福岡を代表する天然わかめの産地として知られています。
【志賀島周辺】※2026年2月末時点の情報です
高級料亭でも指名買いされる、肉厚で風味豊かなわかめ。「弘わかめ」「金印汐わかめ」などが有名です。詳しくは福岡市漁協HP「HAKATA SEAFOODS」をご参照ください。
【玄海島周辺】※2026年2月末時点の情報です
「幻のわかめ」とも呼ばれるほど品質の高いわかめ。島民が協力しながら、ひとつひとつ手作業で加工・販売しています。詳しくは福岡市漁協HP「HAKATA SEAFOODS」をご参照ください。
【地島(じのしま)周辺】※2026年2月末時点の情報です
曽根(そね)と呼ばれる潮流の速い浅瀬で、素潜によって収穫されるわかめ。現在はブランド化に向けた取り組みも進められています。
👇️こちらは【道の駅むなかた】のオンラインショップでご購入いただけます
【楽天市場】冷蔵(塩蔵)現在売り切れ中。販売開始をお待ち下さい。【楽天市場】冷凍(無塩)現在売り切れ中。販売開始をお待ち下さい。
【糸島周辺】※2026年2月末時点の情報です
糸島周辺の穏やかな入江では養殖わかめの生産も盛んです。荒波にもまれて育った天然わかめは肉厚で歯ごたえのあるシャキシャキ食感。一方、静かな海で育つ養殖わかめはやわらかい食感が魅力です。
地元の山下商店さんでは、春先に玄界灘で水揚げされた天然わかめを丁寧に乾物加工した「干しわかめ」が人気。こちらは福岡県・糸島市のふるさと納税返礼品にも選ばれています。
👇️ふるさと納税にはこちらのサイトもおすすめです

🌊豊前海エリアの天然わかめ
瀬戸内海の一部である周防灘に面した北九州市方面でも、天然わかめが収穫されています。とくに関門海峡の激しい潮流に耐えて育つ門司周辺のわかめは、身が締まった歯ごたえの良さと、風味の良さで知られています。
【藍島(あいのしま)周辺】※2026年2月末時点の情報です
激流にもまれて育ったシャキシャキ食感のわかめは、北九州の学校給食にも提供されている地元自慢の食材です。詳しくは北九州市の産業経済局農林水産部農林課HP「地元を食べよう!北九州・地元いちばん」をご参照ください。
👇️こちらからご購入いただけます
なぜかペットグッズ専門店で取り扱いがありました。藍島は「猫の島」としても有名だからでしょうか🐈️?個人的には常温メール便ではなく、5個セットのクール便をおすすめします。
【馬島(うましま)周辺】※2026年2月末時点の情報です
関門海峡から周防灘へと続く潮流の速い海域に囲まれ、海藻が豊かに育つ環境で収穫されたわかめ。手作業で丁寧に加工・販売されています。詳しくは北九州市の産業経済局農林水産部農林課HP「地元を食べよう!北九州・地元いちばん」をご参照ください。
生わかめのレシピと保存方法
福岡では冬から春にかけて、ほとんどのスーパーで旬の生わかめが手に入ります。先日も佐賀県・唐津産の天然わかめを購入することができました。筑前海が”東の玄界灘”だとすると、唐津市が面する佐賀玄海は”西の玄界灘”といったところ。対馬海流の影響を受けて育つわかめは肉厚で、しっかりとした食べごたえがあります。

わかめレシピ:しゃぶしゃぶ
旬の生わかめは、必ず一度はしゃぶしゃぶでいただきます。

①わかめを流水でよく洗い、水気を絞って食べやすい大きさに切ります。
②かつお&昆布出汁にサッとくぐらせると、一瞬で鮮やかな緑色に変わります。
③お好みのタレでいただきます。定番はネギ+塩+ごま油、またはポン酢+柚子胡椒。
茶色い状態の生わかめは傷みやすいため、食べきれない分はその日のうちに冷凍保存しておきます。①のあと熱湯で10秒ほど湯通しし、冷水で冷ましてからしっかりと水気を絞り、1食分ずつラップに包みます。食べるときは冷蔵庫で自然解凍。1ヶ月ほど保存でき、からし酢みそ和え、おひたし、ナムル、うどん、炒め物、かき揚げなど幅広く活用できます。緑色をした市販の湯通し済みわかめも、よく洗って同様に冷凍可能です。

生わかめが手に入らない時期には、主に塩蔵わかめを活用しています。乾燥わかめも便利なので会社に常備していますが(お昼ごはんの汁物用)、普段の料理では食べごたえのある塩蔵わかめでないと物足りなく感じてしまいます。
わかめの色素と栄養成分
わかめを湯通しすると一瞬であざやかな緑色に変わります。これは熱によって茶色の色素「フコキサンチン」とタンパク質の結合が離れ、隠れていた緑色の色素「クロロフィル」が表に現れるためです。
どちらの色素も抗酸化作用を持つことで知られており、若々しく健康な身体づくりをサポートする成分として注目されています。長時間の加熱すると失われやすくなるため、熱湯にサッとくぐらせる程度の短時間加熱がベスト。またフコキサンチンは脂溶性で、油分と一緒に摂ることで吸収率が高まるとされるため、私はわかめ料理によくごま油を合わせます。
めかぶレシピ:めかぶとろろ
もう少しすると、生めかぶも店頭に並び始めます。
めかぶとはわかめの胞子葉(ほうしよう)の部分。出回る期間はごく短く、まさに季節限定の味覚です。

①めかぶのヒダ(ミミ)と軸を切り離し、よく洗います。
②ヒダは熱湯で10秒ほど湯通しして冷水で冷まし、水気をしっかり取ってから包丁で粘りが出るまでたたきます(めかぶとろろ)。
③軸はしょっぱくて固いので、スライスして2〜3時間ほど水にさらして塩抜きします。佃煮や炒め物に。ごま油とニンニクできんぴらにすると良いおつまみになります。
めかぶとろろにはフードプロセッサーも便利ですが、私は高野文子さん著「るきさん」を読んで以来、包丁でとんとん叩くようになりました。あのシーンを思い浮かべると、よりいっそう美味しく感じます。酢を加えると口当たりがなめらかになるので、酢+「名水のたましずく」+ごま油でいただきます。
わかめのぬめりと栄養成分
めかぶのヌルヌルの正体は水溶性食物繊維です。葉の部分に比べて多く含まれるため、包丁で扱うのが少し怖いくらいヌルヌルしていますが、このヌルヌルこそが身体にうれしい働きをもたらしてくれます。
わかめにはシャキシャキ・コリコリとした食感のもとになる不溶性食物繊維も含まれており、食物繊維をバランスよく摂れる食材といえます。
わかめの薬膳効能

わかめには「熱を冷まし、硬くなったものをやわらかくして散らす」作用があるとされています。
『軟堅散結(なんけんさんけつ)』とは、『痰飲(たんいん)』『瘀血(おけつ)』などが体内で停滞し、凝り固まってできた”硬いものーー腫れ物やしこり、結石などをやわらかくして散らす方法です。
中医学では古くから、『鹹味(かんみ:ミネラルを多く含む塩辛い味)』には硬くなったものを軟化させる性質があると考えられてきました。
『痰飲』とは、体内にたまった余分な水分(水湿)が粘性を持ち、病理的な状態へと変化したもの。咳や喉に絡む痰のような分かりやすい例から、重だるさ、頭痛、めまい、関節痛、不眠など、原因がはっきりしない不調まで幅広く関係するとされ、『怪病多痰(かいびょうたたん:原因不明の不調には痰が関与することが多い)』ともいわれています。
こうした『痰飲』は、蓄積する前に排出することが大切です。わかめに含まれる食物繊維や色素成分には、体内の余分なものを包み込んで排出する作用があるとして古くから利用されてきました。「ネバネバ・ドロドロを掃除して、めぐりをよくする」イメージです。
また『瘀血』とは、血のめぐりが滞った状態を指し、さまざまな不調につながると考えられています。わかめには以下のような、血液の質を改善するとされる成分が豊富に含まれています。
・フコキサンチン(茶色い色素)/クロロフィル(緑色の色素)
どちらも抗酸化作用を持つことで知られ、酸化ストレスによる身体への負担を軽減する働きがあるとされています。”錆びてドロドロになった血を、浄化してサラサラ状態に整える”ようなイメージです。
・アルギン酸/フコイダン(水溶性食物繊維)
ぬめり成分。水溶性食物繊維はコレステロールや中性脂肪を包み込み、腸からの吸収をブロックする働きが期待できます。吸収されなかった脂質は便として体外へ排出されるため、結果として血中脂質が低下し、血のめぐりがよくなるとされています。
【わかめが髪に良いと言われるのはなぜ?】

わかめを食べたからといって髪が急に生えやすくなるわけではありませんが、「これから生えてくる髪を健康に、艷やかに育てるための土台作り」という意味では、とても良い食材だと言えます。
中医学では「髪は血余」とされ、美しい髪には血が充実し、すみずみまでめぐっていることが大切だと考えられています。わかめには先にご紹介した色素成分や食物繊維など、血のめぐりをよくするとされる成分が豊富に含まれています。現代的に言い換えると、頭皮の細い血管まで栄養が届きやすい状態にするイメージです。
また、わかめにはビタミンやミネラルも豊富に含まれています。なかでも甲状腺ホルモンの材料となるミネラル「ヨウ素(ヨード)」は、身体の代謝や成長に関わる重要な栄養素。毛髪の生え変わりのサイクルにも間接的に関与していることから、「髪によい食材」として語られてきました。
ただし、日本人はもともと海藻をよく食べる食文化を持ち、ヨウ素の摂取量は世界的に見ても多いとされています。過剰摂取は甲状腺機能に影響を与えることもあるため、特定の食材に偏らず、季節の食材として適量を楽しむのがちょうどよい付き合い方といえそうです。
おすすめの薬膳書籍
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