このブログでは、季節に応じた薬膳食材をご紹介しています。
2026年5月5日(立夏)〜6月11日(入梅)の期間を『初夏の薬膳』として、春・初夏・梅雨におすすめの食材をご案内しています。詳しくは「季節ごとの養生」をご参照ください。
薔薇の季節
5〜6月は薔薇が見頃を迎えますね。6月2日は「ローズの日」ということもあり、博多駅では薔薇のオーナメントが飾られていました。

毎年この季節になると必ず用意するのが「玫瑰花(マイカイカ、メイグイファ)」です。
お湯を注いでローズティーとして楽しんでいますが、実はれっきとした生薬のひとつ。気のめぐりを促し、五月病のイライラや気分の落ち込みをほぐしてくれる働きがあります。
ローズティーはアロマやハーブのショップでも広く販売されていて、ダマスクローズ(Rosa damascena)やケンティフォリアローズ(Rosa centifolia)などが使われていることが多いようです。
最初は「似たようなものだから、効果も似たようなものだろう」とぼんやり思っていました。けれど、生薬について学ぶうちに、同じバラでも『活血調経』を得意とする月季花(コウジンバラ、Rosa chinensis)や『収渋薬』に分類される金桜子(ナニワイバラ、Rosa laevigata)など、まったく異なる働きを持つものがあることを知り、以来『理気(気をめぐらせる働き)』の効能を得たいときには玫瑰花(Rosa rugosa)を選ぶようにしています。
玫瑰花とは
バラ科バラ属は世界中に広く分布していますが、玫瑰花はそのなかでも東アジア原産の「ハマナス」の花蕾を乾燥させたもの。日本にも自生する、身近な植物です。

生薬としての基準は「中国薬典(中国薬局方)」で定められていますが、そこには「Rosa rugosa Thunb. の乾燥花蕾」と明記されており、一重咲き(原種)・八重咲き(変種)を問わず、この種であれば玫瑰花として認められます。
一方、日本薬局方には玫瑰花は収載されておらず、統一の公定規格がないため、健康食品・ハーブ茶・薬膳食材として自由に流通しています。ただし日本の文献やデータベースを調べると、「Rosa rugosa Thunb. var. plena Regel」、つまり八重咲きの変種に絞って記載している例が多く見られます。
なぜ八重咲きが主役になるかというと、単純に花びらが多いから。採取効率の面で圧倒的に有利なため、中国でも実際の流通は八重咲き品種が主流です。
玫瑰花のローズティー
玫瑰花は、春の終わりから初夏にかけて花が開く直前のつぼみを採取し、低温で速やかに乾燥させたもの。中国では山東省の平陰が有名な産地です。「玫」と「瑰」はどちらも玉(ぎょく)に関係する漢字で、古くは「赤くて美しい宝石」を意味する言葉でした。
効能を目的に選ぶなら、「Rosa rugosa」または「ハマナス」と明記された商品を選ぶのが安心です。漢方薬局や中国茶専門店で取り扱いがあります。
【草漢堂】玫瑰花
私がよく利用しているのは、愛知県拠点の漢方薬局グループ「草漢堂」さん。このブログでも何度かご紹介していますが、生薬はほぼここで揃えています。公式オンラインショップのほかAmazonや楽天市場でも購入でき、LINE・電話・Zoomでのオンライン相談にも対応しています。
玫瑰は香りは良いもののあまり味はないので(ほんのり甘い程度)、私はふだん緑茶や紅茶、ハーブティーとブレンドして楽しんでいます。日本酒や白ワインに浮かべておもてなしに出すことも。見た目が華やかなので、とても喜ばれます。

今回は草漢堂さんのご厚意で、玫瑰花と枳実(ダイダイ)2種類の味が楽しめる「気巡りドロップ」のサンプルも同封されていました。とても美味しかったので、次回は正式に注文するつもりです。イライラやモヤモヤが重なって、ため息をつきたくなるような日のお守りにしようと思います。
ダマスクローズのローズティー
ちなみに西洋のローズティーを選ぶなら、ダマスクローズがおすすめです。
主にブルガリアやトルコで栽培されるこの品種は、アロマ精油としても広く知られています。ごくわずかしか採れないため値段はかなり張りますが、一度使うとその価値に納得させられます。

精油としてのローズは、かつてヨーロッパの貴族の間で『若返りの薬』として重宝されていたと言われており、現在でもしみ・しわ・ハリといったエイジングケアを中心としたスキンケアに使われています。
また、ホルモンバランスを整える作用があるとされており、月経不順・PMS・更年期といった女性特有の不調にも良いとされています。若い頃は少し苦手だったこの香りが、50を目前にした今はとても心地よく感じられるようになりました。身体が求めているのかもしれません。
ローズティーとして飲むと、玫瑰花と同様に気分の落ち込みをやわらげ、心を明るくしてくれます。
【ローズテラス】うれしのローズティー
おすすめは「ローズテラス」さんの「うれしのローズティー」。バラに特化した商品開発を手がける佐賀の会社で、とりわけダマスクローズに強いこだわりを持っています。
無農薬のうれしの和紅茶とブルガリア産の無農薬ダマスクローズをブレンドした「うれしのローズティー」はとても香りが良く、精神的に疲れたな、しんどいなと感じた一日の終わりに、自分をねぎらうご褒美の一杯になっています。
👉️こちらの公式ホームページからご購入いただけます
オマケ:ローズヒップ
ローズヒップは、バラが咲いたあとにできる赤い実です。

ローズヒップに使われるのは主に、スイートブライヤー(Rosa rubiginosa)やドッグローズ(Rosa canina)といった原種に近いバラの実。どちらもヨーロッパ原産ですが、16〜17世紀の大航海時代にスペインが新大陸へ持ち込み、チリのアンデス山麓で野生化しました。今では世界に流通するローズヒップの多くがチリ産です。
玫瑰花(ハマナス)のローズヒップも存在しますが、国産はほぼ流通していません。ハマナスは北海道を中心に日本にも自生しているものの、栽培に手間がかかり生産者が少ないのが現状です。
栄養面では、レモンの約20倍とも言われるビタミンC に加え、ビタミンEやポリフェノールも含んでいます。生薬には分類されませんが、強い抗酸化作用を持つ美容食材として、ハーブティーやサプリメント、スキンケアなどに幅広く活用されています。

ローズヒップ商品には酸味が強すぎて苦手なものも多いのですが、TEARTH(ティーアース)の「ローズヒップハイビスカス」はとてもおすすめです。
TEARTHは2017年に誕生した大阪発の輸入茶葉専門店。安心・安全をモットーに、心と体に優しいティーバッグを展開しています。はちみつパウダー入りの紅茶シリーズで人気に火がつきましたが、私のイチオシはハーブティーシリーズ。とくにローズヒップハイビスカスは酸味がマイルドで気に入ってます。
玫瑰花の薬膳効能

玫瑰花には「気滞による症状を緩和する」作用があるとされています。
中医学でいう『気』とは、体内をめぐるエネルギーのようなもの。身体を動かし、内臓を働かせる、生命活動の根幹にあるものです。全身に『気』が満ちていれば内臓や筋肉がよく働き、『気』のめぐりが良ければ血液循環や代謝が活発になります。
逆に『気』が滞ると、身体の中の流れも悪くなります。食べ物がうまく流れなくなると消化不良や胃もたれ・胸焼けがおこりやすくなり、感情がうまく流れなくなるとイライラしたり気分が落ち込んだりします。また喉や胸につかえ感が生じ、息苦しく感じることもあります。これらの症状を『気滞』と呼びます。
『気』をめぐらせるのは『肝』の『疏泄(そせつ)』作用によるものです。『肝』はストレスに敏感で、新生活の緊張が続く5〜6月はとくに不調を感じやすくなります。「なんとなく気持ちが落ち込む」「やる気が出ない」「だるい」「集中できない」といった、いわゆる「五月病」と呼ばれる症状はここから来ています。
この時期は柑橘類やハーブ類など、香りで気のめぐりを促す『理気』の食材がおすすめ。柑橘類が「さっぱりリフレッシュ!」なら、玫瑰花は「やさしくほぐしてくれる」イメージ。ノンカフェインのハーブティに1〜2個加えるだけで、不安や緊張がゆっくりほどけていく感覚があります。
女性特有の不調——PMSや月経不順——にも働きかけるとされており、私自身もPMSがひどかった時期によく頼っていました。これからは更年期対策としても、手元に欠かせない生薬になりそうです。
芳香成分の観点から
玫瑰花の香りのもととなる芳香成分には、シトロネロールやゲラニオールといったモノテルペンアルコール類が知られています。シトロネロールには鎮静・リラックス作用、ゲラニオールには女性ホルモン(エストロゲン)のバランスをサポートする働きが期待されており、玫瑰花の「気をほぐす・女性特有の不調を整える」という薬膳効能を、芳香成分の面からも伺うことができます。
おすすめの薬膳書籍
薬膳の効能は、書籍によって記載内容が異なることがよくあります。これは薬膳が、数千年にわたる人々の実践と経験の積み重ねで発展してきた学問だからこそ。そんなとき頼りになるのが『先人に学ぶ 食品群別・効能別 どちらからも引ける 性味表大事典 改訂増補版』。
複数の古典書をもとに、1184種類の食材が掲載されており、薬膳を実践するならぜひ手元に置いておきたい一冊です。

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